オリンパスによる「飛ばし」問題が世間を騒がしているが、その本質的な問題点は、2001年にアメリカで起きたエンロン事件と酷似していると、大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。
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光学機器大手のオリンパスがバブル期の証券投資の損失を外部に移す「飛ばし」で隠し、企業買収の資金で穴埋めしていた問題は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)や会社法の特別背任などを視野に入れて当局の実態解明が進んでいる。
オリンパス・ショックの最大の問題は、監査法人に対する信用がなくなったことである。これは2001年にアメリカで起きたエンロン事件と構図が酷似している。
エンロンは総合エネルギー取引とITビジネスを展開する全米有数の大企業だったが、デリバティブ投資の損失を隠蔽・穴埋めするために行なっていた巨額の不正経理・不正取引が明るみに出て破綻に追い込まれ、会計監査を担当しながら粉飾決算やその証拠の隠蔽工作に関与していた世界有数の監査法人アーサー・アンダーセンは信用が失墜して解散を余儀なくされた。
それと同様に、いま世界では、日本企業のディスクロージャー(情報公開)やガバナンス(企業統治)は全くなっていないのではないか、他の会社は大丈夫なのか、という不信感が広がって、全体的には日本売りの状態に陥っている。
これほど大がかりなオリンパスの不正を20年間も見抜けずに放置していた“ゆるフン”の監査法人や証券取引所や証券取引等監視委員会はいずれも信用できないということで、日本企業全体に対する信頼が大きく揺らいでしまったのである。
実際、大王製紙の前会長による関連会社からの異常な借金も、担当のトーマツが見抜けなかった。すなわち三大会計事務所がこの二社の不祥事にすべて関与している、という点が異常なのである。
この際、監査法人の責任も含めて粛正すべきはすべて粛正し、膿を出し切らねばならない。そうでないと、ディスクロージャーとガバナンスに血のにじむような努力をしている他の日本企業が浮かばれない。
※週刊ポスト2011年12月9日号