いつにも増して海外移籍組やFA組が多い今年のプロ野球のストーブリーグだが、選手の大量流出はセパ両リーグの優勝チームにも影響を与えている。日本一に輝いたソフトバンクでは和田毅と川崎宗則がメジャーを目指し、ベテランの柴原洋が引退。杉内俊哉もFA申請の動きを見せた。
スポーツ紙記者が解説する。
「日本シリーズの祝勝会でも、杉内は1人だけ妙に醒めていた。以前からフロントとの確執が伝えられており、移籍は時間の問題といわれてきた。すでに西武の帆足和幸の獲得に動くなど、球団は善後策をとっていますが、和田に杉内まで抜けると戦力は大幅に低下する。2人合わせて24勝の穴を、9勝の帆足が埋められるのか」
日本シリーズで敗れた中日でも、大きな異動がある。最大の“流出”は落合博満監督だが、左のエースであるチェンのメジャー移籍も決定的。米国スポーツ専門チャンネルESPNは「日米FA選手ランキング上位50」を発表しているが、チェンの評価は3位にランクインした日本ハム・ダルビッシュ有に次ぐ19位だ。
中日関係者はこう語る。
「落合監督は選手たちに“いくらでも拾ってくれるチームはあるから契約更改は強気で行け”とハッパをかけていたそうです。なにしろ退団が決まってから“チームをボロボロにして引き継いでやる”と捨て台詞を漏らしていましたから(苦笑)」
リーグ優勝したとはいえ、チーム打率と得点は12球団で最低。「チェンがいなくなったら、計算できるのは吉見と浅尾だけ」(中日OB)という状態では、高木守道監督、権藤博投手コーチも頭が痛いだろう。
ほかに注目されるFA選手では、阪神・鳥谷敬がいる。鳥谷は東京生まれ、六大学出身で「打てないと罵倒される甲子園がイヤでたまらない」という東京恋しさが移籍願望の理由ともいわれている。
スポーツジャーナリストがこう指摘する。
「広島の栗原健太はFA権行使をちらつかせて様子を見ていたが、思ったより評価が低かったので行使は来オフに持ち越した。阪神の新井貴浩も同じく残留ですが、こちらはFA権を行使。声をかける球団がなく、諦めたと見られています」
ソフトバンク、中日というセパ王者が力を失い、海外移籍でヤクルト、日本ハム、西武、楽天が、お家騒動で巨人が……2012年の球界では勢力が一気に変わる可能性があるのだ。
※週刊ポスト2011年12月9日号