“ドン”渡辺恒雄氏に喧嘩を売って、華々しく(?)散っていった清武英利・巨人軍元球団代表。そのバトルは現在も尾を引いているが、「ナベツネ糾弾会見」を行なった直後の清武氏に意外な人物が励ましの電話をかけていたことはあまり知られていない。
電話の主は、関西国際大学客員教授・野崎勝義氏。かつては阪神タイガース球団社長として、各球団フロントが集う代表者会議で清武氏と舌戦を繰り広げた人物である。
「清武さんは私も理想としていた『若手を育成・起用するチーム作り』をされた巨人の功労者。その人物が困っているので励ましの電話をさせてもらったのです。清武さんには過去に論争したことで“野崎さんにはご迷惑をおかけしました”といわれましたが、とんでもない。私もオーナーから“聞いてない”といわれて困った経験がありますから、気持ちはようわかるんです(笑い)」
野崎氏のいうオーナーとは、今年9月に亡くなった久万俊二郎氏。“東のナベツネ、西のクマ”と称された名物オーナーで、ファンから愛されもしたが、一方で「現場介入」も多かった。
野崎氏によれば、「球界は一般論が通用しない特殊な業界」であるという。
「新聞の論調には、『読売社内の問題なので読売新聞の役員会や巨人の取締役会の中で議論を戦わすべきだ』というものが目立ちましたが、それはあくまで理想論。今回の巨人のケースではその理屈は通用しません。
阪神も巨人も同じやと思いますが、全役員がオーナーの顔色を窺うんですよ。例えば、オーナーが冗談ぽく“ワシもぼちぼち辞めなあかんな”といえば、ナンバー2やナンバー3の役員が“もっとやってもらわんと”とご機嫌をとる。
まァ、どの世界でも同様だとは思いますが、人事権を持っている者が圧倒的に強いから、耳の痛い進言をした部下はすぐ飛ばされてしまうということはよく見聞きしました。今回も、腹立たしい結果になりましたね」
※週刊ポスト2011年12月9日号