11月22日、大手新聞各紙に「オウム裁判終結」の見出しが並んだ。その背景を大手紙司法担当記者が明かす。
「これだけ大きく報じたのは、裁判終結が麻原はじめオウム真理教の死刑囚たちの刑執行に大きく関わってくるからです。我々は麻原の死刑執行が年内いつ行なわれてもおかしくないと見ています。すでに予定原稿の準備は半ば終わっていますから」
麻原死刑囚の控訴が棄却され、死刑が確定したのは2006年のことだ。確定死刑囚の刑執行までの平均拘置期間は5年11か月。共犯者の裁判が終結したことで、いつ麻原死刑囚の「Xデー」が訪れても不思議ではない。
一方、麻原死刑囚の年内執行説が囁かれるのには、こんな事情もある。法務省関係者の話。
「昨年7月、千葉景子法相のサインによって、2人の死刑囚が執行されて以降、死刑は行なわれていません。1年通じて死刑が未執行ならば1992年以来で19年ぶりの事態になる。メンツを気にする法務官僚たちは焦っていることでしょう。
遠藤誠一被告の判決期日は今月に入る前に確定していたので、省内では約1か月前から麻原死刑囚の刑の執行へ向けた協議がされていました。当然、最終的な決断をする平岡秀夫法相にも、その声は届いています」
遠藤被告を加えると確定死刑囚は129人に達する。この数は過去最多である。ある法曹ジャーナリストは、「これは法務官僚の沽券に関わる問題」と語った。
「確定死刑囚が過去最多に達したのは、麻原に加えオウムの幹部信者12人がそこに加わったという要素もある。だから法務官僚は幹部信者らの刑の執行の流れを以前から作ろうとしていますが、そのためにはまず、麻原の執行がなされなければならないという考えです。
公判で検察側は、“主犯”麻原が事件を主導して、幹部信者たちが“従犯”として凶悪犯罪に手を染めたというストーリーを描いたからです。法務官僚は、“過去最多の確定死刑囚”“年間死刑執行ゼロ”を回避するためにも、麻原の手続きを迅速に進めたいのです」
オウム事件の被害者側からも、刑の執行がなされない限り、事件は終息しないとの声が多い。地下鉄サリン事件で夫を亡くし、16年半にわたりオウム裁判の傍聴を続けた高橋シズヱさんも、強い思いを述べる。
「法治国家で死刑という制度がある以上、それに値する犯罪を起こして刑罰を下されたなら執行されるべきです」
※週刊ポスト2011年12月9日号