デフレ不況、東日本大震災の傷痕に苦しむ日本経済。反転攻勢の頼みの綱となるのは、巨大市場中国への輸出だ。だが、その中国もインフレやバブル崩壊が迫っている。13億人のマーケットが崩壊した時、もはや中国なしではやっていけない日本経済への打撃は計り知れない。対岸の火事は瞬く間に日本まで延焼する。
もしそうした事態が来れば、日本の輸出産業の象徴でもある自動車産業は大打撃を受ける。埼玉大学経済学部の相澤幸悦教授はこう解説する。
「日本の自動車メーカーの場合、大衆車でも“高級”として扱われ、よく売れています。品質がよく、壊れないから多少高くても売れたのです。安いから売れている韓国・現代の自動車とは対照的です。ところが中国経済が行き詰まれば、収入を減らした富裕層はまず贅沢をやめる。つまり真っ先に日本車が売れなくなります。
例えばトヨタの場合、2011年3月期のグローバル販売台数(日野、ダイハツ含む)は730万8000台で、うちアジアは134万4000台で全体の18.3%。中国の経済行き詰まりで15%程度の売り上げ減もあり得ると見ていいでしょう。
トヨタよりも中国で伸びているのが日産。日産は、今年度のグローバル販売台数予想を475万台と想定しているが、そのうち中国は125万台で26.3%。4分の1が中国。売り上げの4分の1が吹っ飛ぶ可能性もあり得ます」
鉄鋼業界では新日鉄やJFEスチールが、それぞれ上海宝山鋼鉄、広州鋼鉄企業集団と合弁企業を設立し、事業展開している。中国の鉄鋼業はすでに日本の8倍もの規模に成長しているが、橋梁や高層ビルの鉄骨に用いる高品質な鋼材や自動車用鋼板を製造する技術が中国にはまだなく、そういった製品は日本からも輸出されている。しかし、高層タワーマンションの建設ラッシュが止まれば、鋼材の需要も減少するはずである。
中国鉄鋼業協会の10月10日の発表によれば、これまで上昇の一途だった中国の鉄鉱石価格が4週連続で低下し、9月の国産鉄鉱石価格は6.6%下がり、輸入鉄鉱石価格も下降傾向にあるという。需要が減っているのである。
※SAPIO2011年12月7日号