国王夫妻の来日で突如起こったブータンフィーバー。2005年に行なわれた国勢調査では、実に98%の国民が「幸福」と答えたといわれる“幸福”の国の風土や暮らしに人々の関心も集まる。が、そこには知られざる“性風習”もあるという。2度のブータン旅行経験を持つノンフィクション作家・片野ゆか氏が語る。
「ある地方でお祭りがあって、そこに国王もいらっしゃっていた。それで私のホテルにも、政府随行員と思われる役人たちが泊まっていてね。夕方5時ぐらいかしら。トントントンってドアがノックされたんです」
片野氏が部屋を間違ったのかと思いドアを開けると、初対面の男が立っていた。「入ってもいいかい?」と突然いわれ、片野氏はもちろん「ノー!」。が、30分後、またドアがトントン……。
「一晩で6人きたこともありました。最後は呂律が回らない酔っ払いのおじさんもやってきた(笑い)」
これはブータンで「ナイトハンティング」と呼ばれる文化――つまり日本でいう“夜這い”である。
「都市部ではさすがに自粛されてきましたが、地方の村ではまだ残っているみたい。男の子が15歳前後になると、兄弟や従兄なんかに誘われて夜這いにいく。家屋の多くは1階が納屋になっている2~3階建て。そこをよじ登り家に訪いを入れるから、村の男性たちは、『だから、男の爪は皆はがれているんだよ』なんていってました(笑い)」
ただし、部屋にあげてもらったからといって、「すぐに行為に励むわけではなく、最初は二人で話をする」(同前)。お互い合意の上で“夜の営み”がなされるのだ。ブータンの国内事情に精通し、この11月、『ダワの巡礼 ブータンのある野良犬の物語』を翻訳・出版した平山修一氏が語る。
「失われた日本がここにある。美しい田園があるし、人々は礼儀正しい。夜這いがあるのは女性に対してアプローチしてもセクハラにならないという土壌があるからでしょう。最終的な権利を女性が持っているのも大きい。男からすれば自分を売り込んでなんぼ。失敗したら次を探せばいいんです」
※週刊ポスト2011年12月9日号