「寝ても覚めてもずっとゴヌクのことを考えちゃうんです。もう何週間も、繰り返し見続けてしまって、“もう見ない!”と誓って3日やめたら寂しくて変になっちゃいました」
これまで韓流にまったく興味のなかったJ子さん(43才・仮名)がそうため息をつく。
「初めて新大久保(東京・新宿区にあるコリアンタウン)に行ってグッズ屋さんのレジに並びながら、“この私が新大久保で(ゴヌク役の)ナムギル・グッズを買っちゃうの?”って苦笑ですよ。携帯電話の待ち受け画面を芸能人にしたのも生まれて初めて」
作品の世界にハマってしまったN美さん(35才・仮名)のような人もいる。
「豪雨の夜に、小さな子供を家から叩き出すシーンなど、衝撃的なシーンが次々思い出されて、暗い気持ちになってしまう。家事が手につかなくなるほど、どうしても引きずってしまうんです」
こんな悲鳴をあげるのは、韓流ドラマ『赤と黒』(NHKBSプレミアムにて毎週金曜22時より放送中)にハマる女性たち。彼女たちのようなファンを、韓国では“ドラマ廃人(ペイン)”と呼ぶ。韓流ライターの村上淳子さんはいう。
「ネット社会の韓国では、1話終わるごとに深夜までチャットで討論する熱狂的なファンも多い。翌日の仕事が手につかなくなる人が続出し、そうしたドラマを“廃人ドラマ”といいます。余韻が強すぎてなかなか眠れない、普段の生活をしていても、ついドラマのことばかり考えてしまう、などが典型的な症状です。『赤と黒』を見た日本の視聴者の多くも同様の症状に陥っているようです」
ストーリーはどんでん返しとドロドロの応酬だ。幼児期に親から引き離され、財閥・ヘシングループの御曹司“ホン・テソン”として引き取られたものの追い出されたシム・ゴヌク(キム・ナムギル、30才)と、ゴヌクの代わりに“本物のホン・テソン”として育てられた男(キム・ジェウク、28才)のふたりを中心に話は進む。そこに、タイプや年齢の異なる3人の女性が絡み合い、復讐、愛、出生の秘密などがてんこ盛り。
NHKの専用掲示板にも、「(見終わった後に)あまりにも日常生活に影響が出るため、もう忘れようと一歩引いて、離れてしまおうと思ったのですが、だめでした」とか、「“この男についていくとどうなっちゃうかわからないんだけどついていきたい”みたいな、日常では体験できないときめきを感じて、魂を抜き取られたよう」などという、まさに“廃人”状態の書き込みが並ぶ。
※女性セブン2011年12月8日号