今年辛亥革命100周年を迎える中国で、騒動が持ち上がっている。記念に建設される、ビル8階の高さの人物像が、ある人物に似ていて、これは偶像崇拝につながるというのだ。いまさら、取り壊すこともできないし……。ジャーナリストの富坂聰氏が報告する。
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いま、中国の一部でちょっと不思議な水かけ論が話題となっている。
「これはどう見ても宋慶齢じゃないか!」「いえ、これは“黄河の娘”です」
問題の発端は河南宋慶齢基金会(=基金会)が今年辛亥革命100周年を迎えることを記念して建設を進めた大きな人物像である。河南省の黄河のほとりに建てられたこの像が、どう見ても孫文夫人の宋慶齢に見えることから物議をかもしたのである。
辛亥革命を起こした孫文といえば中国からも台湾からも尊敬される国父として知られる民族の英雄だが、個人崇拝につながる像の建設となれば政治的にも微妙な問題になりかねないのだ。
基金会としてみればこれが政治問題になるとは思っていなかったのかもしれない。
問題は「像が問題だ」と言われても、これがとにかく大き過ぎることだ。高さは8階建てのビルと同じで広さは800平方メートルもあるのだ。これをいまさら取り壊すとなると大変な作業だ。そこで登場したのが、「これは宋慶齢ではありません。あくまで“黄河の娘”です」と言い張る戦法なのだ。
もう像は表情も完成し、どう見ても“黄河の娘”というよりおばあちゃんなのもご愛敬というわけだ。