スポーツ

ザック監督好物 北朝鮮が没収「チューブ入りわさび」の正体

ザック監督の大好物「チューブ入りわさび」の正体

話題のニュースや著名人などに縁のある料理を紹介する「日本全国縁食の旅」。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏がお届けする。今回は、11月 15日、北朝鮮で行われたサッカーW杯アジア三次予選で同国政府に没収されたある食材について考える。

* * *
サッカーW杯アジア3次予選北朝鮮戦で、むしろ次のような見出しが目を引いた。「ザック監督、大好物を没収されていた」。

日本代表・ザッケローニ監督が北朝鮮に入国する際、常時持ち歩いているというチューブ入りのねりわさびを平壌空港で取り上げられた。その事実を日本サッカー協会の小倉純二会長が「すった(高級な)わさびじゃなく、チューブ入りのヤツがいいみたい」というオマケ情報つきで明かしたところ、ネットの掲示板などで「トンカツもわさびで食うらしいぞ」「白飯にもたっぷりとわさびを乗せて食べるんだとか」など試合結果のことなど忘れたかのような盛り上がりを見せた。

ザッケローニ日本代表監督を惹きつけてやまない、チューブ入りわさびの正体とは何か? まず一般に流通しているわさびの種類から整理しておきたい。

小倉会長が「すったわさび」と言ったのは、高級寿司店などで一般的に使われる「沢ワサビ」と呼ばれるもの。山間地の湧水や清流の流れる渓流で栽培され、百貨店の店頭などでもよく見かけるアレである。ちなみに植物学上の同じ品種(Wasabia japonica)を陸の畑で栽培すると「畑ワサビ」となる。

そしてザック監督お気に入りのチューブ入りのわさびによく使われるのが、セイヨウワサビ(Cochlearia armoracia/ Armoracia rusticana)。ローストビーフなどのつけ合わせで知られる「ホースラディッシュ」であり、ワサビダイコンとか「山ワサビ」という名でも呼ばれる。

ほかにもよく北海道産のセイヨウワサビと混同されがちなエゾワサビ(Cardamine yezoensis)や、ユリワサビ(Wasabia tenuis)といった種もあるが、食用としては沢ワサビとセイヨウワサビが圧倒的なシェアを持っているのが実情だ。

ちなみにチューブ入りのわさびでも「本わさび」「生わさび」という表記があるが、現在では「沢ワサビ」――つまりWasabia japonica種を50%以上使用したもののみ「本わさび使用」と謳うことが可能となっている。50%未満は「本わさび入り」という表示になる。ザック監督は「いつもカバンに100円程度で買ったチューブ入りのわさびを持ち歩いている」という報道から考えると、セイヨウワサビの比率が高い製品と考えられる。

「ごはんにもわさび」というザック監督に対して、スポーツ紙からは「“変食家”」、ネット上からも「おかしいだろ」というツッコミが入っていた。だが東京・牛込柳町の「つず久(く)」という名居酒屋には「わさびめし」という看板メニューがある。

炊きたてごはんに、おろしたての山わさび(セイヨウワサビ)を大量にかけ、醤油を一回し。女将さんの「ほら、早く食べて!」の号令とともに大の大人が涙ながらにメシをかっ込むという名物メニューだ。

もちろん、チューブのわさびではまったく同じ味わいとまではいかないが、試してみるとそれなりに近い味わいになる。変食家どころか、先入観に囚われることなく、手に入る材料で名店の味わいに近づけているとも言える。一事が万事。現実を見つめながら理想を追求する、そんなザック監督の姿勢はチーム作りだけでなく、食選びにも反映されている?


関連キーワード

関連記事

トピックス

休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
戸田菜穂など、配役の妙が早くも朝ドラファンの注目を集めているという/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
『あんぱん』で朝ドラヒロイン経験者が共演…『ええにょぼ』戸田菜穂と『ひまわり』松嶋菜々子、“役どころ交換”の遊び心ある配役
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン