笑福亭鶴瓶(59)がゲストとともにぶっつけ本番の旅をする『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK・毎週月曜午後8時~)が震災後、“人と人との絆を実感できる”と注目されている。
鶴瓶がゲストとともにぶっつけ本番の旅をするこの番組で大きな役割を果たすのが、登場するごく普通の家族たち。どこにでもいそうな家族たちが番組の魅力になっていると話すのはコラムニストのペリー荻野さんだ。
「震災を経験した日本は元気がないとき。将来に希望が見えづらい中でやはり人は身近なものに目がいくもの。そんなときにごく普通の家族の絆を見ると、日本もまだ捨てたもんじゃないなと思ったりしますね」(ペリーさん)
家族をはじめとする人々の絆を再確認したのが、5月23日と30日に放送された宮城・石巻市の再会編だ。甚大な津波の被害を受けた石巻だが、震災の1年半前に鶴瓶はこの地を訪れていた。
震災当日の3月11日、スタジオでこの番組の収録を行っていた鶴瓶が真っ先に口にした言葉は、地域の人々の安否だった。番組チーフ・プロデューサーの佐橋陽一さんはこう振り返る。
「ニュース映像を見ながら、鶴瓶さんは、以前番組で訪れた石巻や塩釜の人たちは大丈夫なのか? と非常に心配されていました。時期が来たら、必ずもう一度、この番組で被災地を訪れたいといっていましたね」
鶴瓶が被災地である石巻を訪れたのは5月の初め。選んだパートナーは歌手のさだまさし(59)だった。
そもそもこの番組がスタートしたきっかけはさだの発案だった。1995年放送の特別番組では『さだ&鶴瓶のぶっつけ本番二人旅』というタイトルだった。番組当初から構成を担当する放送作家の井上知幸さんは、鶴瓶とさだの関係を次のように語る。
「さださんからこれまでにない旅番組を作るならパートナーは親交のある鶴瓶さんと指名されたんです」
その放送回(1995年8月16日放送)の岐阜・谷汲村(現・揖斐川町)では、村のテーマソングを歌うさだのために鶴瓶がコンサートをセッティングしようと奔走する姿があった。
ともに番組を立ち上げてきたからこそ、震災のときにはふたりで何かできないか、という思いがあったという。
「鶴瓶さんもさださんも、被災地を回って何かやらなければと思ったといっていましたね。石巻では家族との再会はもちろん、谷汲村の回と同様、おふたりが協力しあって、現地でライブを開く機会がありました。不思議なめぐり合わせでした」(井上さん)
番組ではこれまでも、地方の小さな町で出会った家族との何気ない交流から、笑いや涙が生まれた。井上さんがこう語る。
「何かと物事を、東京など大都会に住む人の基準で考えてしまいがちですが、素晴らしい日本の風景や、家族の絆の大切さを教えてくれる人々の温もりは全国の何気ない場所にこそある。この番組は、そのことに気づかせてくれます」
※女性セブン2011年12月15日号