大阪のW選挙で大阪維新を掲げた橋下徹氏が圧勝、いよいよ「大阪都構想」が動き始めた。橋下氏の掲げた「大阪都構想」とは、簡単にいえば現在の大阪府と大阪市の二重行政を撤廃し、無駄な行政コストを省くというもの。政令指定都市である大阪市と堺市の各区(それぞれ24区、7区)は約30万人単位の「特別区」に再編され、住民に密着した行政サービスは「特別区」が、道路や災害対策、大規模公共工事などは「大阪都」が管轄する。
ところが、大阪市内の高級住宅地である住吉区・帝塚山に住む住民は微妙な反応を見せた。
「行政の無駄を解消するための大阪都という考えは理解できる。せやけど、巻き込まれる当事者としての立場は別や。橋下さんは“住民エゴ”というかもしれんけど、人間ってそういうもんやろ。特に大阪はな」
大阪の「区格差」は市民にとって切実な問題だ。たとえば、日雇い労働者が集まる「あいりん地区」を抱える西成区は、住吉区や阿倍野区、浪速区などと接しており、大阪都構想ではそうした隣接区同士の合併・統合が行なわれる。
「大阪は区ごとに住民の生活水準やスタイルが違う。それを効率化という理由でくっつけられたら困る。嫌な言い方に聞こえるやろけど、お荷物区と一緒になるなんて考えられへん」(同前)
厚労省調査によれば、大阪は全国で最も生活保護受給者が多い(15万人。府民18人に1人)。保護費の4分の1は各自治体の負担で、大阪市は一般会計の17%にあたる2916億円を計上している。中でも西成区は突出しており、区民4人に1人が生活保護を受けている。隣接する住民は、「合併すると、現在の行政サービスが吸い取られてまう」(同前)と不安がる。
昨春には維新の会が作成した区割り案の存在が明らかになったが、多くの住民から異論が上がった。今後は市が設立した協議会で区割り提案がなされた後に住民投票で決定する予定だが、「各地で反対デモが起き、住民対立が激化するのは必至」(大阪市議)という。
※週刊ポスト2011年12月16日号