現在の日本の株式市場は、もはや外国人投資家の動向次第といえる。11月にはオリンパスの巨額損失隠しが発覚し、市場に暗い影を投げかけている。今後、外国人投資家はどう動くのか、海外マネーの動向に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏が解説する。
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巨額の粉飾決算が発覚したオリンパス。東証の上場基準に違反することから、上場廃止となる可能性が高いが、上場廃止になっても、当面、株式市場にはネガティブな影響が、長く残るだろう。なぜなら、外国人投資家は、オリンパス問題を深刻に受け止めているからだ。
オリンパス問題発覚以降、外国人投資家は精密機械メーカーの株を売却しているが、その理由は、オリンパスのような粉飾決算をしているのではないか、という疑念を持っているからである。同じ業種であれば、似た企業風土を持ち、同じような投資行動をとっている可能性があると外国人投資家は見ている。
また、同じ精密機械メーカーではなくても、ここ数年間でM&Aを繰り返しているような企業にも、疑惑の目が向けられている。やはり、オリンパス同様、損失を隠すためにM&Aをしているのではないかと疑っているのだ。
疑いをかけられている企業にしてみれば、とんだ濡れ衣と感じられるだろうが、この事件の重大性を考慮すれば、はた迷惑というだけでは片づけられない。
それは、大企業の粉飾問題が、全体の株価に大きな影響を与えた前例があるからである。2001年10月に起きた「エンロン事件」と、2002年6月に起きた「ワールドコム事件」である。当時の米国を代表する巨大企業だったエンロンとワールドコムが、いずれも不正会計をしていたことが明らかとなり、破綻に追い込まれた不祥事である。
両社の株価が暴落したのはもちろんのこと、債券を組み込んだMMF(信用度の高い公社債や短期金融資産で運用される投資信託)が急落し、日本の証券会社が販売するドル建てMMFの価格も下落。比較的リスクの少ない金融商品とされていた外貨建てMMFだったが、保有する個人投資家には少なくない損失が出てしまった。 そして、それ以上に、株式市場には大きなネガティブ材料となった。
エンロン事件が起きた時点では、それほど全体の市場には影響が出なかったが、ワールドコム事件が起きて以降、株式市場は下げ続け、なんと米国株の代表的なインデックスであるS&P500は35%以上も下げ、上昇基調に転換するまでには約10か月を要したのである。
不正会計が1社にとどまらず、2社となったことで、他の企業も粉飾をしているのではないかと、市場全体が疑心暗鬼になってしまったためだ。もし不正会計が行なわれていれば、企業が公表する利益や資産の価値の信憑性はなくなり、妥当な株価などは、一切不明になってしまう。
また、ワールドコムは、証券会社が「ストロング・バイ」として顧客に推奨を続けていたため、年金を運用する投資家も大量に保有していた。その結果、あらゆる投資家に大きなダメージを与えることになったのである。
そうした連想から、外国人投資家もオリンパスに続いて2社目が出ないかと、目を凝らして日本の株式市場を眺めているのである。オリンパスは、エンロン、ワールドコムに比べると企業規模は小さいが、優良企業であることには変わりはない。もし、2社目が出る事態になれば、日本株は大きく売られることになるだろう。
※マネーポスト2012年新春号