ビジネス

オリンパス事件 外国人投資家が深刻に受け取る理由を解説

現在の日本の株式市場は、もはや外国人投資家の動向次第といえる。11月にはオリンパスの巨額損失隠しが発覚し、市場に暗い影を投げかけている。今後、外国人投資家はどう動くのか、海外マネーの動向に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏が解説する。

* * *
巨額の粉飾決算が発覚したオリンパス。東証の上場基準に違反することから、上場廃止となる可能性が高いが、上場廃止になっても、当面、株式市場にはネガティブな影響が、長く残るだろう。なぜなら、外国人投資家は、オリンパス問題を深刻に受け止めているからだ。

オリンパス問題発覚以降、外国人投資家は精密機械メーカーの株を売却しているが、その理由は、オリンパスのような粉飾決算をしているのではないか、という疑念を持っているからである。同じ業種であれば、似た企業風土を持ち、同じような投資行動をとっている可能性があると外国人投資家は見ている。

また、同じ精密機械メーカーではなくても、ここ数年間でM&Aを繰り返しているような企業にも、疑惑の目が向けられている。やはり、オリンパス同様、損失を隠すためにM&Aをしているのではないかと疑っているのだ。

疑いをかけられている企業にしてみれば、とんだ濡れ衣と感じられるだろうが、この事件の重大性を考慮すれば、はた迷惑というだけでは片づけられない。

それは、大企業の粉飾問題が、全体の株価に大きな影響を与えた前例があるからである。2001年10月に起きた「エンロン事件」と、2002年6月に起きた「ワールドコム事件」である。当時の米国を代表する巨大企業だったエンロンとワールドコムが、いずれも不正会計をしていたことが明らかとなり、破綻に追い込まれた不祥事である。

両社の株価が暴落したのはもちろんのこと、債券を組み込んだMMF(信用度の高い公社債や短期金融資産で運用される投資信託)が急落し、日本の証券会社が販売するドル建てMMFの価格も下落。比較的リスクの少ない金融商品とされていた外貨建てMMFだったが、保有する個人投資家には少なくない損失が出てしまった。 そして、それ以上に、株式市場には大きなネガティブ材料となった。

エンロン事件が起きた時点では、それほど全体の市場には影響が出なかったが、ワールドコム事件が起きて以降、株式市場は下げ続け、なんと米国株の代表的なインデックスであるS&P500は35%以上も下げ、上昇基調に転換するまでには約10か月を要したのである。

不正会計が1社にとどまらず、2社となったことで、他の企業も粉飾をしているのではないかと、市場全体が疑心暗鬼になってしまったためだ。もし不正会計が行なわれていれば、企業が公表する利益や資産の価値の信憑性はなくなり、妥当な株価などは、一切不明になってしまう。

また、ワールドコムは、証券会社が「ストロング・バイ」として顧客に推奨を続けていたため、年金を運用する投資家も大量に保有していた。その結果、あらゆる投資家に大きなダメージを与えることになったのである。

そうした連想から、外国人投資家もオリンパスに続いて2社目が出ないかと、目を凝らして日本の株式市場を眺めているのである。オリンパスは、エンロン、ワールドコムに比べると企業規模は小さいが、優良企業であることには変わりはない。もし、2社目が出る事態になれば、日本株は大きく売られることになるだろう。

※マネーポスト2012年新春号

関連キーワード

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン