「控えおろう! この紋所が目にはいらぬか」
日本人の耳になじんだあの名セリフが聞けなくなる。12月19日、42年間続いた『水戸黄門』(TBS系)の長い旅路がついに終幕を迎えるのだ。
なぜ、黄門さまはこれほど長く愛されたのだろうか。1998年の第27部からチーフプロデューサーを務める中尾幸男さんは“偉大なるマンネリ”が秘訣だと明かす。
番組終盤、黄門さまの身分を明かす葵の紋の印籠が登場し、悪党がひれ伏すシーンがこのドラマのお約束だが、就任当初の中尾さんは、「そればかりじゃおもしろくない」と、あえて印籠が出ない回を作ってみたこともあった。
「結果は散々で、『なぜ印籠を出さない』『寂しいじゃないか』と、視聴者から多くのクレームをいただきました」(中尾さん)
2001年の29部から黄門さまを演じた石坂浩二は、「殿様はひげを生やさない!」とうんちく好きな彼ならではのこだわりを見せ、ひげなし姿で登場。
ところがこちらも視聴者から、「ひげのない黄門さまは水戸黄門ではない!」とクレームが殺到し、次シリーズからは石坂もひげをつけた。
「こうした経験から、一見マンネリでも“変えてはいけないもの”があることがわかりました。歌舞伎や落語も『待ってました!』という定番があってこそのもの。“型”があるゆえ、人々に愛されて支持されるんです」(中尾さん)
※女性セブン2011年12月22日号