国際情報

拉致被害者 100人規模で1か所にまとめられたとの証言出る

2012年金正恩体制に移行するといわれる北朝鮮。日本にとって最大の関心は、新体制によって拉致問題がどう変化するかだ。そんな中、今年6月、韓国の拉致被害者家族会代表から重要な情報が寄せられた。金正恩が日本の拉致被害者たちを特別管理下に置いたというのだ。韓国拉致被害者家族会代表の崔成龍氏が報告する。

* * *
日本と韓国の拉致被害者が、金正恩の指示により秘密裏に強制移住させられていた。私は韓国の拉致被害者家族会代表として、日韓両国に横たわる拉致問題が一日もはやく解決することを願い、最新の情報を日本の皆さんと最大限共有することにした。

北朝鮮による拉致は、1960年代に遡る。私の父をはじめとする多くの韓国人が漁に出て海上で拉致された。日本では、横田めぐみさんや、2002年に帰国を果たした蓮池薫・祐木子さんご夫妻、地村保志・富貴恵さんご夫妻、そして曽我ひとみさんは1970年代に拉致され、北朝鮮に連れて行かれた。

私はこれまで自力で100人以上の韓国人拉致被害者の居場所を突き止め、7人を帰国させた。北朝鮮内にエージェントを抱えて調査してもらうのだが、ひとりの被害者の居場所が分かると、大抵そのつてで近隣にいる数十人が特定できた。

日本人拉致被害者は北朝鮮に連れて行かれると、平壌周辺の招待所を定期的に移動させられながら、洗脳教育を受けたという。

帰国した蓮池薫さんの証言によれば、1980年になって、平壌の南東20kmにある忠龍里という人里離れた山間に招待所が建てられ、居住していたという。そこには地村夫妻も暮らし、数年後に横田めぐみさんも加わったと証言している。彼ら日本人同士が会うことは禁じられていた。蓮池さんら日本人拉致被害者の主な役割は、工作員に日本語を教えることだったという。

また、平壌には「革命区域」と呼ばれている地域があり、日航機よど号をハイジャックした犯人グループや、日本人拉致被害者が生活していたと思われる。こうして平壌を中心に点在していた拉致被害者が、ひとつの場所に集められたというのだ。

この情報を受け取ったのは、今年の6月のことである。情報提供者は、2006年に横田めぐみさんの夫が1978年に拉致された金英男と洪ゴンピョのうちのどちらかだと伝えてきた人物である。現在は平壌で外交関連任務を担当。海外を自由に行き来でき、比較的高い地位にある。その人物は、実際にその強制移住先へ行ってきたという。

強制移住は、この情報がもたらされる少し前、5月中旬を中心に行なわれたという。具体的にいつ頃からいつ頃にかけて移住が行なわれたのかまでは、残念ながらわからない。だが、もう何か月も経過しているので、移住はすでに完了しているだろう。

移住対象者は、平壌市内の万景台区域と龍城区域をはじめ、いくつかの地域に居住していた日韓の拉致被害者全員である。

移住先は、平壌市郊外の平安南道平原郡院和里。平壌直轄市中心部から北へ25kmほどのところに平壌国際空港があるが、その近郊、空港からさらに北に向かい平安南道に入ってすぐのあたりだと聞いている。

そこは非常に厳重な監視体制が敷かれている。ほかの地域とくらべても、監視水準はずば抜けて高い。当然ながら、一般人の立ち入りは許されていない。居住者は病院や買い物で外出する際でも、承認や許可が必要である。北朝鮮でそのようなところであれば、居住地区内部でも監視の眼が光っているはずだ。

この強制移住を指示したのは、冒頭でも述べたとおり金正恩である。情報員によると、移住を実行するにあたり、「外国人特別管理組」という組織が編成され、金正恩の傘下に置かれたという。

この組織は拉致被害者をはじめ、国軍捕虜や、1950年代の母国帰還事業で帰国していった在日朝鮮人たちの管理を任務としている。そして、人民保安省の外事課と連携し、監視体制の強化を進めている。

なお現在、院和里に何人の居住者がいて、日韓の拉致被害者のほかにどんな人々がいるのかということまでの情報はない。ただ、韓国政府がこれまで認定した拉致被害者の数が570名であり、私が居住地を把握していた韓国人拉致被害者の数だけでも100人ほどである。

したがって、100名以上の人たちがそこでの生活を余儀なくされていることだけは間違いない。とにかく、日本や韓国から拉致された人たちはほぼ全員、そこに収容されていると考えていいだろう。

※SAPIO2011年12月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん、母・佳代さんのエッセイ本を絶賛「お母さんと同じように本を出したい」と自身の作家デビューに意欲を燃やす 
女性セブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
国民民主党の平岩征樹衆院議員の不倫が発覚。玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”に(左・HPより、右・時事通信フォト)
【偽名不倫騒動】下半身スキャンダル相次ぐ国民民主党「フランクで好感を持たれている」新人議員の不倫 即座に玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”になった理由は
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
永野芽郁、4年前にインスタ投稿していた「田中圭からもらった黄色い花」の写真…関係者が肝を冷やしていた「近すぎる関係」
NEWSポストセブン
東京高等裁判所
「死刑判決前は食事が喉を通らず」「暴力団員の裁判は誠に恐い」 “冷静沈着”な裁判官の“リアルすぎるお悩み”を告白《知られざる法廷の裏側》
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《インスタで娘の誕生報告》大谷翔平、過熱するメディアの取材攻勢に待ったをかけるセルフプロデュース力 心理士が指摘する「画像優位性効果」と「3Bの法則」
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《田中圭に永野芽郁との不倫報道》元タレント妻は失望…“自宅に他の女性を連れ込まれる”衝撃「もっとモテたい、遊びたい」と語った結婚エピソード
NEWSポストセブン
上白石萌歌は『パリピ孔明 THE MOVIE』に出演する
【インタビュー】上白石萌歌が25歳を迎えて気づいたこと「人見知りをやめてみる。そのほうが面白い」「自責しすぎは禁物」
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《お泊まり報道の現場》永野芽郁が共演男性2人を招いた「4億円マンション」と田中圭とキム・ムジョン「来訪時にいた母親」との時間
NEWSポストセブン