11月9日、米系大手格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが、野村ホールディングス(HD)の格付けを、現在の「Baa2」から引き下げる方向で見直すと発表した。欧州の金融危機がいよいよ日本にも波及するのか。ジャーナリストの須田慎一郎氏が報告する。
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ムーディーズ社が「見直し」を判断した理由として挙げているのが、同社の欧州部門における損失の拡大だ。野村HDの2011年7~9月決算(米国会計基準)は、最終損益ベースで460億円の赤字を計上した。野村HDの赤字転落は、10四半期ぶりのこととなった。
野村HD幹部はこう話す。
「赤字転落の最大の要因となったのは、何といっても欧州で猛威をふるう債務危機。その直撃を受ける形で、欧州ビジネスは壊滅状態に追い込まれたと言っていい」
今後の展開しだいでは、野村HDの経営問題が一気に浮上してきかねない状況にある、というのがマーケット関係者の一致した見方だ。大手金融機関役員の話だ。
「そうした情勢を受けて、『野村争奪戦』とも言える、野村HDを巡る再編話が色々と取り沙汰されるようになっています」
ここで言う「野村争奪戦」とは、メガバンクを中心とする銀行業界による“野村救済”という色彩を強く持つと見ていい。前出の大手金融機関役員もこう証言する。
「野村HDに最もご執心なのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)というのが衆目の一致したところです。この両社に関してはもう既に首脳同士が接触を図った、という未確認情報も業界内で出回っています」
このように欧州財政・金融危機が、かつて証券業界では「ガリバー」と称された“大・野村証券”の足元を大きく揺るがす事態にまで発展しようとしている。
※SAPIO2011年12月28日号