2012年金正恩体制に移行するといわれる北朝鮮。日本にとって最大の関心は、新体制によって拉致問題がどう変化するかだ。現在、まったく進展していない拉致問題について、韓国拉致被害者家族会代表の崔成龍氏が話す。
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非常に残念なことであるが、私は横田めぐみさんについてここでお話しできる新しい情報を何ひとつ持っていない。
ただ現在、めぐみさんのご主人である金英男さん、そして娘さんの金ウンギョン(ヘギョン)さんはふたりとも、金正恩師団というものに所属しているとのことだ。師団というからには軍隊が連想されるが、その組織自体についての詳しいことは把握できていない。ただ、そういったものに所属する彼らでさえも例外なく、強制移住の対象となったのである。
私は日本の皆さんにあえて訴えたい。是非とも被害者の家族の視線から拉致問題を見ていただきたいと。
たとえば、横田めぐみさんのことにしても、本人がすぐに帰ってくることが理想ではあるかもしれない。だが私の立場からすると、めぐみさんのご両親をお孫さんである金ウンギョンさんに、一日でも早く会わせてあげてほしい。
それが実現すれば、めぐみさんが今現在どうしているのかについて、もしかすると聞きだせるかもしれない。いや、北朝鮮政府があいだに入るのだから、そこまでは難しいとしても、めぐみさんがどのような生活を送っていたのかということなら聞きだせるはずだ。そういうところも含めて知りたいと思うのが、親や家族というものである。
※SAPIO2011年12月28日号