「大人の雰囲気があっておしゃれ、それでいて聴いていて落ち着く、というのがいまのジャズ。それに“ジャズ風”、“ジャズテイスト”というのが最近のキーワードです」
こう語るのは、音楽評論家の富澤一誠氏。堅苦しいイメージのあったジャズが、新たなファンを獲得し、にわかに注目を集めている。
ここ最近、ジャズCDの話題作が続いている。スウェーデンのジャズミュージシャンが『涼宮ハルヒの憂鬱』『天空の城ラピュタ』といったアニメの楽曲をカバーしたCD『プラチナ・ジャズ』が、2009年にリリースされヒット。この人気を受け、翌年には第2弾が発売、来年2月の第3弾の発売も決定。また、JUJUが11月にリリースした自身初のジャズアルバム『DELICIOUS』は、オリコン週間アルバムランキングで初登場5位となり、ジャズCD史上初の快挙を果たした。
「私が学生のころは、“フリー・ジャズ”というジャズのジャンルが流行っていて、ジャズといえばジャズ喫茶で渋い顔して聴くもので、難しいイメージがありました。しかし、いまは、アニメソングや、JUJUなどの人気アーティストによるカバーによって、聴きやすい、わかりやすい音楽になってきています」(富澤氏)
最近では、子供向けに童謡をアレンジしたジャズや、ピアノがガンガン鳴る“アゲ系ジャズ”などの女子向けジャズも人気を呼んでいる。
そして、ジャズが人気を呼んでいるもうひとつの理由に、東日本大震災以降、癒しを求める傾向が強まっていることも考えられるという。富澤氏が続ける。
「震災以降、音楽で癒されたい、元気になりたいという人が増えています。そんななかで、癒しを求めてジャズを聴く人が増えているということです。ジャズは、ロックやポップスと違って、ゆったりとしたリズムなので、聴いていて心地よい。ジャズは4、5年ほど前から徐々に流行り始めていてスタンダードナンバーのCDが売れていたので、ヒットの下地もありました。
由紀さおりさんが、米国のジャズ・オーケストラ『ピンク・マルティーニ』と組んでアメリカで話題を呼んでいますが、これはジャズの癒し効果と由紀さんの透明感あふれるウィスパーボイスがうまくハマったからです。外国でも、紛争があったり地震や大洪水などの天災が起きたりしていますから、ジャズを聴いて癒されたいと思っている人が増えていることを示すひとつの現象ではないでしょうか」