誕生した橋下徹大阪市長の人気が高まるばかりだ。早くも「国政へ出て欲しい」の声まである。その人気の秘密とは何なのか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏によれば、橋下氏の話す姿勢にはいくつかの特徴が見て取れるという。以下は、山下氏の解説である。
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12月19日の今日、いよいよ橋下徹大阪市長が誕生し、全国から熱い視線が集中しています。市長の仕事を始めたばかりなのに、東京の街角調査では「国政へ出てほしい」という声が庶民から殺到しているとか。
橋下氏がこれほど人気を集める理由とは何なのでしょうか。その刺激的な発言と言動で「日本を覆う閉塞感を打ち破ってくれる」といった期待感からなのか。
どうやら、橋下氏が打ち出す「大阪都構想」などの政策や政治の中味以外にも、人々が気持ちを捕まれる秘密が隠れていそうです。
市長就任を前に、テレビの報道番組でいくつもインタビューを受けた橋下氏。話す姿勢にはいくつかの特徴が見て取れます。
・瞳を、しっかりと大きく開く。
・まばたきが少ない。
・まっすぐに、前を見て話す。
・歯を出して、ニコニコ笑う。
・眉間にシワを寄せない。
・政治家によくある「あー」「うー」の発声がほとんど無い。
・目が泳がない。
・歯切れがよい。
画面に映った印象を一言で言うと、つるんとした「ゆで卵顔」。つまり、殻を剥かれた茹で卵のように、シンプルで隠し事がなく、表情がとても読み取りやすいということが特徴です。
では、多くの政治家が、瞳を大きく見開かなかったり、眉間にシワを寄せたり、目を泳がせたり、下を見てメモを読むのはなぜなのか? 「あー」「うー」という無意味な音を言葉の間にはさむのは、なぜなのか?
おそらく、政治家の多くが抱いている本音と建て前が関係しているはず。話をしながら、複数の利害が頭の中を巡り、その利害調整や帳尻合わせが必要になる。失言のないよう言葉を選ぶための、いわば時間稼ぎが「あー」「うー」。
しかし、橋下氏はそんな帳尻合わせをすることなく、自分の考え方と政策を、ズバっと直球で投げてくる。反対なら選挙でノーと言ってくれ、自分を落としてくれ、というわかりやすさ。
「あー」「うー」を発しない話し方の中に、橋下氏のスタンスが端的に現れていると言えないでしょうか。
視線や表情、一つ一つは些末なことかもしれませんが、テレビを見ている有権者は、話し手の表情やしぐさ、動作をトータルに受け取りながら、「その人がどんな人か」を把握しているのです。
橋下氏は「ハシズム」と揶揄されていますが、それは言ってみれば自分の考え方・イズムをぶつけてくる珍しい政治家だ、ということ。だとすれば、その直球の方向が間違った時には、即座に批判を直球で投げ返して「リコール」し、市長の座を降りてもらえばよい、ということではないでしょうか。
いずれにせよ、これからしばらくは大阪から目が離せません。