10月末に、1ドル=75円台まで急騰したドル円相場は、政府・日銀の巨額円売り介入後、78円前後で推移している。為替のスペシャリストで酒匂エフエックス・アドバイザリー代表の酒匂隆雄氏が今後の為替相場の展開を予想する。
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2011年10月31日から行なわれた、政府・日銀の円売り介入の規模は、覆面介入やそれ以後の介入を含めると、9.5兆円から10兆円に上ると見られている。
実は、投機筋がこの介入では大きく損失を出している。ヘッジファンドなどの投機筋のポジションを表している、シカゴのIMM(国際金融先物市場)の米ドル/円の推移を見ると、介入が入った前の週に円ロング(円の買い持ち)のポジションを前々週と比べて倍増させた途端に、円売り介入を食らった格好となった。
そのため、約32億ドルを買戻しさせられていることがチャートから読み取れる。投機筋の1ドル=75円台の介入に対する警戒感はかなり強くなっているだろう。
ちなみに、IMMのデータでは、くりっく365での本邦個人投資家が介入で大きな利益を上げていることがわかる。投機筋vs本邦FXトレーダーは、今回はFXトレーダーが勝ったといえる。
この年末に向けては、ヘッジファンドの決算も近づき、投機筋の運用額もじょじょに絞られてくる。投機的な動きが細ってくれば、すでに行なわれている介入の効果も表れ始めるだろう。相場に付きもののオーバーシュートはあろうが、私は10月31日に付けた1ドル=75円32銭が、目先の円の天井となる可能性が高いと考えている。
※マネーポスト2012年新春号