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中国は世界の工場として限界「金持ちになる前に老いが来た」

中国を動かす最高指導部9人のメンバーの一人が国民に、「景気の減速がもたらす社会不安に備えよ」と警告した。つまり、官僚や富裕層に対する失業者の不満が爆発寸前なのだ。中国は、どこに行こうとしているのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

* * *
12月5日、シンガポールCNAテレビは、中国の治安担当のトップである周永康中国共産党中央政治局常務委員が「景気の減速がもたらす社会不安に備えよ」と警告したことを伝えた。

周永康といえば胡錦濤をトップに中国を動かす最高指導部9人のメンバーの一人であるだけに、これが党中央の意志であると考えて間違いない。

注目されるのは、なぜ治安・司法担当の周永康が発言したのか、という点にある。

その答えは簡単だ。ここ数年の社会不安といえば、常に生活に不満を抱えた人々が官僚や富裕層(この中心はいまや国有企業の経営幹部になっている)に対して怒りをぶつけることがパターンとなっていて、官僚・富裕層の華美な消費など目立つことを「控えろ!」という警告だからだ。

そして「景気の減速がもたらす社会不安」とは、衰退の激しい輸出産業を中心に吐き出されてくる失業者を指しているのだ。

中国がいずれこうした問題に直面することは、すでに拙著『中国マネーの正体』(PHPビジネス新書)で詳しく記しているが、簡単に言えば世界の工場としての限界(賃金上昇、元高など)を迎えたということなのだ。要するに先進国が“いつか来た道”なのだが、中国がことさらこの変化に神経質になるのは、「金持ちになって老人になった日本」とは違い、「金持ちになる前に老いがやってきてしまった」からなのだ。

いずれにせよ治安・司法の最高責任者が号令をかけた以上、民を落ち着かせるためにも見せしめの取締りの嵐が吹き荒れることになるのだろう。

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