皇室の長い歴史の中で初となる試みが検討されている。「女性宮家」創設――過去、女性天皇は8人存在したが、女性を当主とする宮家が作られた例はない。にもかかわらずそうした案が浮上しているのは、いうまでもなく皇太子さま、秋篠宮さまの次の世代となる男性皇族が、いまのところ秋篠宮悠仁親王おひとりしかいないとことへの危機感からだ。
男系を重視する立場から女性宮家創設に反対している人たちは依然多いが、彼らもまた、皇族の減少に危機感を抱いていることに違いはない。
そこで浮上しているのが、「旧宮家を復活させる」という案だ。旧宮家とは、1947年、戦後の占領下にGHQの指令によって皇籍を離脱した旧皇族の11宮家を指す。高崎経済大学教授の八木秀次さんがいう。
「旧宮家の存在が、現在の国民感情から遠いのではないかという意見があることは承知していますが、国民感情というのはその時々で変わるものです。将来の皇位継承者が悠仁さまだけという状態を脱するためには、復活も選択肢のひとつとして検討すべきだと考えています」
しかし旧皇族・竹田宮家出身で、『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)の著書もある慶應義塾大学講師・竹田恒泰さん(36)の意見はこうだ。
「私は女性宮家の創設には反対ですが、唯一、可能だとすれば、旧皇族から男系男子の婿を取っていただき、男性を当主とした宮家を創設することです。これなら、男系は守れます」
一方、女性宮家創設に賛成の立場から話すのは、皇室ジャーナリストの神田秀一さんだ。
「悠仁さまが即位されたころ、天皇陛下をお助けする皇族がいなくなるという危機感を解消する観点からいって、女性宮家の創設という考え方は妥当といえます。しかし私の危機感は、それにとどまりません。皇族の減少はそのまま皇位継承者の減少を意味しますから、まさに、皇室の危機なのです。
ですから、女性宮家を創設して皇族の減少に歯止めをかけると同時に、女性天皇を認めて、皇位継承者を絶やさぬようにしなければなりません。万世一系、男系にこだわりすぎて女性宮家の創設に反対していれば、逆に皇室の存続そのものを脅かすことになりかねません」
さらに、旧宮家復活論についてもこう批判する。
「11宮家51名の皇籍離脱というGHQの指令を政府が受け入れたことに、当時の昭和天皇はたいへん苦い思いをされたはずです。困ったから帰ってきてくださいという問題ではないと思います」(神田氏)
もうひとり、女性宮家創設に賛成する立場から話すのは、京都産業大学教授の所功さんだ。所さんはしかし、「女性宮家」と女性皇族の「皇位継承権」については、分けて考える必要があるという。
「私自身は女性宮家を創設するなら、その当主となる女性皇族には皇位継承権を認めるべきと考えますが、その範囲や順位はとても複雑になります。ですからまず緊急の課題として女性宮家を創設し、皇位継承については数年かけてじっくり考えるべきだと思います」
所さんによれば、まず第一に、女性宮家を認める範囲が問題となる。
天皇陛下の直系の孫である独身女性を「内親王」といい、現在は愛子さま、眞子さま、佳子さまの3人。これ以外の独身の女性皇族は「女王」で、三笠宮家の彬子さま(29才)、瑶子さま(28才)、高円宮家の承子さま(25才)、典子さま(23才)、絢子さま(21才)の5人がいらっしゃる。
「宮家創設を認める範囲を、内親王までとするのか、女王にも認めるのか。宮家創設に際して皇位継承権を認めるとなれば、よくよく検討する必要があります」(所さん)
そのうえで、皇位継承順位を決めなければならない。
「まず、男系男子との差異をつけるのか、つけないのか。女系天皇を認めるのであれば、男系、女系、それぞれに男子、女子が混在することになりますから、それらの順位をどうするのか…女性宮家への皇位継承問題はとても複雑になりますから、少なくとも数年間は検討しなければならないと考えます」(所さん)
また、前出の神田さんのように、「女性宮家を創設するか否かは、女性皇族ご本人の選択に委ねるべき」とする意見もある。
※女性セブン2012年1月1日号