アメリカと中国の間で翻弄され続ける日本外交。中国は執拗に国際社会での日本の孤立を仕掛けようしてくるとジャーナリストの櫻井よしこ氏は警告する。
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中国の胡錦濤政権は、米国主導のTPP(環太平洋経済連携協定)や、海兵隊のオーストラリア駐留など、自らが「孤立」させられつつあることに大きな懸念を抱いています。2012年には習近平体制に移行しますが、彼らの「中国が世界の中心」という中華思想は変わることがありません。彼らは、引き続き覇権主義を強め、我が国に対して様々な工作をし、日本が国際社会で孤立するように仕掛けてくる可能性があります。
その際に、私たちが学ぶべきなのが、歴史の教訓、即ち、開戦直前の状況なのです。
満州国では、日本は日本人・漢人・朝鮮人・満州人・蒙古人の「五族協和」を掲げ、インフラ整備など国づくりに取り組みました。にもかかわらず、国際社会から「満州人の自治は形式だけにすぎない」「事実上の日本の植民地拡大」というレッテルを貼られました。「侵略一色ではない」ことを世界に説明すればいいのに、下手だったわけです。いかに自国の立場や取り組みを国際社会に説明することが重要か、ということです。
日本を孤立させようとする中国の「切り札」は、いつでも歴史問題です。
「従軍慰安婦問題」や「南京大虐殺」は、事実ではなく、非常に歪められた形で伝えられてきました。国際世論は、事実関係を詰めたり歴史的検証をすることなく、イメージ先行で日本への悪印象を持ってしまいます。日本がしっかりした調査によって裏付けされている事実を前面に打ち出して冷静沈着に反論することが非常に重要なのです。中国や韓国に“配慮”してそれをしなければ、この先、日本が世界の中で孤立させられていく可能性は排除できません。
現在の日本には、国家戦略を決定する仕組みやリーダーシップがありませんが、このようなスカスカの国家体制は改めなければなりません。
※SAPIO2011年12月28日号