2011年の世界金融情勢は、新興国市場も大きな調整を余儀なくされたが、2012年はどうだろうか。新興国投資のカリスマと知られるグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏によると、2012年の投資先として有望な新興国は、中国とブラジルだという。以下、戸松氏が解説する。
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「谷深ければ、山高し」という相場格言があるように、株価のリバウンドは大きく売り込まれている市場ほど期待ができる。その筆頭が「中国」といえるだろう。
中国は2010年第2四半期以降は、インフレ抑制のための金融引き締め政策が続き、それが株価の重石になってきた。特に香港市場では、欧米の機関投資家を中心に資金の引き上げが顕著となり、大きく売り込まれた結果、香港H株指数のPER(株価収益率)は2011年予想が8倍台、2012年予想が7倍台と極めて割安な水準に置かれている。
ただ、「M2」というマネーサプライ(通貨供給量)を見ると、4兆元規模の景気対策が実施された2008年末以降は大きく膨らんできたが、現在は金融引き締めによって相当絞られている。その結果、CPI(消費者物価指数)も2011年7月の前年同期比6.5%をピークに10月は同5.5%まで落ち着きを見せており、このままいけばインフレ懸念も払拭されるに違いない。
実際には、インフレが沈静化し、中国政府が今度は景気浮揚のための財政出動をするまでにあと半年ほどかかるかもしれないが、株価は先行して上がることが見込まれる。そう考えていくと、現在の中国市場は割安株の「宝庫」といえるのではないだろうか。
たとえば中国国内の石油・天然ガス用のパイプラインを手がける勝利管道(香港・01080)などは、金融引き締めによって受注が大きく落ち込み、株価もピーク時の5分の1まで下落している。しかし、今後インフレ沈静化によって受注が回復してくれば、大きな株価上昇が期待できるだろう。
一方、中国と同様、株価を大きく下げている「ブラジル」は、CPIを見る限り、まだまだ物価上昇に歯止めがかかっていない。中国のようにマネーサプライを抑えてこなかったことが響いており、もう少し調整局面が続くと見た方がいい。
ただし、ブラジルは「新興国」「資源国」「高金利国」というハイリスク・ハイリターン市場の特徴を併せ持つため、景気循環に合わせて大きく上がって大きく下がる傾向が強い。つまり、次に大きく下がった時が絶好の買い場となるのだ。
現在、ブラジルは株安、債券安に通貨レアル安のトリプル安に見舞われているが、今後それらが一気に反転する可能性も高いと見ている。
※マネーポスト2012年新春号