女性アナウンサーは、時代を映す鏡だ。この国でテレビ放送が始まった1953年から半世紀以上。その間、数多くの女性たちがブラウン管を彩り、そして消えていった。
特に、高度経済成長と重なり合うテレビ黎明期の女子アナ界を牽引したのは、美貌と高いアナウンス技術を兼ね備えた女性たちだった。
元NHKアナウンサーのテレビ司会者、草野仁氏が語る。
「私の思い出の女子アナといえば野際陽子さんと下重暁子さんです。一緒にお仕事をしたことはありませんがNHKの大先輩です。2人は1960年ごろ、現在の『おはよう日本』につながる朝7時台のニュースを担当していました。ともに美貌のアナウンサーとして有名で、私も憧れた。
野際さんがNHKに在籍していたのはわずか4年足らずのはず。それでも多くの視聴者に強いインパクトを残した。対する下重さんは、女性らしい節度を感じる進行が素敵でしたね。当時は若さやタレント性ではなく、喋る技術にアナウンサーとしての重点が置かれていたように思います」
※週刊ポスト2012年1月1・6日号