現役を退いて数十年経つ今でも、野球への情熱は燃え上がるばかり。まだまだ若い者には任せられん! そんな球界の重鎮が日本のプロ野球にモノ申す。ここでは400勝投手・金田正一氏の主張を聞こう。
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ワシが現在の球界にいいたいことは、新聞紙面を騒がす契約交渉のことだ。
中継ぎ、抑えで3億、4億などという金額が当たり前になっているが、正気かと思ってしまう。「年間50試合投げているから」というが、ワシらの時代は先発で50試合投げるなど珍しくもなかったゾ。
ワシが現役の頃は、「カネは後からついてくる」と考えてプレーをしたもんじゃ。先輩諸氏の背中を追いかけ、「この人たちの記録を絶対に破ってやる」と技術を磨き、誰にも文句をいわれない記録を打ち立てた。
だが、今の子たちは何よりカネが優先のように見えて仕方がない。ワシらOBを黙らせるような力を持つ選手はごく稀で、「先人の記録を破る」というプロとしての気概も感じられん。そのくせ、カネの話ばかりして高額契約を要求する。実に情けない。
何より、複数年契約をやめるべきだ。選手に心の緩みを生み、ケガを招く。ワシは滅多にケガをしなかったが、故障で戦列を離れたのは、巨人時代の1965年に複数年契約を結んだ時だった。プロは1シーズンごとに結果を出さねばならん。その結果、成績が良ければ大幅アップを勝ち取ればいいし、悪ければダウンを受け入れて次に奮起すればいい。
選手の“銭ゲバ体質”を許してきた経営者側にも問題がある。現在の球界には真剣に経営を考えている者がいるだろうか。身売りの話は横浜だけでなく、他球団にも出ているという。確実にしわ寄せが来ているのだ。それが回り回って選手自身の首を絞めることを自覚するべきだろう。
プロである以上、銭カネも大事だが、野球選手としてまず記録を追い求め、確固たる地位を築きなさい。
※週刊ポスト2012年1月1・6日号