投資家に人気のFX(外国為替証拠金取引)だが、これまでは「くりっく365」などの市場取引と、店頭取引で税制が異なっていた。それが2012年1月1日以降、一本化されることになるという。FX税制の何が変わるのか、税理士の柴原一氏が解説する。
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個人投資家に人気のあるFX(外国為替証拠金取引)やCFD(差金決済契約)は、商品先物と同じく、税制上は、デリバティブ(金融派生商品)取引に分類されます。デリバティブ取引には、市場(あるいは取引所)取引と店頭取引の2種類があります。
FXでいうところの「くりっく365」「大証FX」などの市場デリバティブ取引等の課税方法は、雑所得の申告分離課税とされ、その税率は20%(所得税15%+住民税5%)となっています。また、発生した損失については、確定申告をすることを条件に3年間の繰越控除が認められています。
一方の店頭デリバティブ取引等については、当初、証拠金規制や取引業者の規制が、市場取引に比べて緩かったとの理由により、優遇された申告分離課税ではなく、雑所得の総合課税となっていました。市場デリバティブ取引等のような損失の繰越控除の適用もなく、雑所得であることから、その損失額は切り捨てでした。
しかし、店頭デリバティブ取引等は、段階的に市場デリバティブ取引等と同様に証拠金規制等が整備されてきており、現在は、市場取引と店頭取引とで規制上の大きな差は存在していません。また、以前より、店頭デリバティブ取引と市場デリバティブ取引は、経済的性質が同一の金融商品であるのに、同一の課税方法ではないことなどの問題点が指摘されていました。
そこで、金融商品間の課税の中立性を高める観点から、平成23年度の税制改正により、平成24年1月1日以降、現行では総合課税とされている店頭デリバティブ取引等にかかる所得に関して、市場デリバティブ取引等にかかる所得と同様、20%(所得税15%+住民税5%)の申告分離課税としたうえで、市場取引と店頭取引間の損益通算および損失額の3年間の繰越控除の対象となります。FXなどにおける市場取引と店頭取引の課税の違いは、なくなるのです。
なお、今回の改正の対象となる取引には、店頭FX取引に加えて、金・大豆などの商品先物、株式の価格や指数に連動するCFD取引などがあります。
※『サラリーマンのための安心税金読本』(小学館)より