金正日の死去により、北朝鮮情勢はどのように展開していくのだろうか? 今後は後継者の金正恩を金正日の妹・金慶喜と、その夫で国防副委員長を務める実力者・張成沢が支えるという見方が有力だ。
「金正日は、金正恩がまだ独り立ちができないとして、張成沢を後継に指名していた。実際に、権力を動かせるのは張成沢くらいしかいないが、彼と軍部が権力を掌握した場合、正恩は金正日のような独裁はできない。ポイントは張成沢がいかに自分を抑えて金正恩を支えるか。ことによっては権力闘争が起き、権力中枢が混乱する可能性もあり得る」(ジャーナリストの惠谷治)
また、関西大学経済学部教授の李英和氏によれば、本来なら2012年に金正恩への権力移譲が完了するはずだったと語る。
「2009年に後継者に内定して以来、金正恩の偶像化作業が続けられてきたが、09年末の貨幣改革(デノミ)に失敗し、しばらくは足踏み状態が続いていた。しかし、今年5月頃からは本格的に再起動。金正日が後ろ楯となって金正恩を支えつつ、2月16日の金正日の生誕祭、遅くとも4月15日の金日成生誕100年に当たる太陽節までには、金正恩の偶像化作業を完了させる予定だった。作業の総仕上げの前に金正日が死亡したのは大きな誤算のはず」
権力基盤は固まっていないものの、権力の中枢にいる者たちにとってひとまず重要なのは現体制を維持することだ。そこで予想されるのが、朝鮮労働党と軍による集団指導体制である。
「金正恩ファミリー、労働党長老グループ、軍首脳によるトロイカ体制になるでしょう。最高指導者を失った北朝鮮国内はいわば有事であり、当面、金正恩を支えて一致団結するはずです。しかし、30歳にも満たない金正恩が独裁体制を築くにはまだまだ年数が必要。トロイカ体制は一度バランスが崩れれば、瞬く間に亀裂が生じる可能性があります」と『コリア・レポート』編集長の辺真一氏は分析する。
※週刊ポスト2012年1月1・6日号