老人ホームに入居する高齢者にとって、食事は「健康のため」、「長生きのため」だけのものではない。単調になりがちな施設の生活の中だからこそ、「三度のメシ」は日々の暮らしを彩る最大の要素になる。せっかくの人生の円熟期を味気のない食事で過ごすなんてもったいない。本誌記者が実際に全国の老人ホームを巡り、極上の食事を提供する施設を厳選した。
そのうちの一つが、「舞浜倶楽部 新浦安フォーラム」(千葉県浦安市)だ。同施設の総料理長は高級日本料理の老舗「なだ万」出身。味付けは料理長の指示でベテランの調理師が担当している。
「食事は命の源だから、決して手を抜きたくない。味や栄養のバランスはもちろん、料理の彩りにこだわっています。たとえば、認知症の人は赤い色が認識しやすいので、紅ショウガやトマト、杏仁豆腐に赤いチェリーを添えるなど、最後まで食欲をそそる工夫をしています」(星川一弘・総料理長)
あえて入居者が食事を選べないようにしているのは、好き嫌いで栄養が偏らないようにするため。食材比率45%(食費に占める食材費の比率)で新鮮な食材を提供することや、飽きのこない家庭料理を中心に据えることで、日々の食事は入居者にとって大きな楽しみになっている。
※週刊ポスト2012年1月1・6日号