現在日本の政治は「政治主導」とは名ばかりで、官僚主導のまま。日本の政治はどこへ向かっていくのか。そんな現状に対し「言わずに死ねるか!」――政治家経験者による日本政界への提言を聞こう。ここでは元労働大臣の山口敏夫氏(71)の話を聞こう。
* * *
政界を引退して以来、永田町に未練などまったくなかったのだが、私も3・11の大震災で変わった。被災地にも足を運び、私にもできることがあるのではないかと思うようになった。
関東大震災後に内務大臣として東京の復興計画を推進した後藤新平が、なぜ平成の世に出てこないのか。未曾有の大災害に直面しているというのに民主党政権はまったく動きが悪い。政治が今なすべきことは、TPPでも消費税論議でもない。復興予算がいくらかかるのかをはじき出すことではないのか。
にもかかわらず民主党政権が後手後手に回るのは、権力の使い方がわからないからだ。
政治主導などと掛け声だけは勇ましいが、今の日本を動かしているのは官僚だ。戦後60有余年、今ほど官僚主導の時代はない。
それに比べて、私が現役時代の政治家たちは違った。与野党を問わず、国家の一大事に直面した時の「突破力」「攻撃力」は、比較にならないほど強かった。
民主党が抱える根本的な問題は、政権交代で見せた抜群の突破力を持つ小沢一郎という政治家を座敷牢にとじ込めてしまったことだろう。明治政府が西郷隆盛にした仕打ちと重なる。
小沢さんといえば、前回の参院選挙で柔道の谷亮子さんが出馬した時に私の名前が出て大いに迷惑した。小沢さんが谷さんを擁立する際、私がフィクサーのように動いた、などと書き立てられたからだ。昔、谷さんの後援会の世話人をしていたので選挙のお手伝いをしたのは事実だ。
しかし、それ以上でもそれ以下でもない。私の名前など出たら、谷さんにとって応援というより、足を引っ張っているようなものじゃないか(笑い)。
●山口敏夫:1967年初当選。自民党、新自由クラブ、新進党など。元労働大臣。1996年引退。
※週刊ポスト2012年1月1・6日号