先頃、野田政権は国家財政の逼迫を理由に、高齢者が残す資産を“没収”することを狙い、相続税改正の議論を開始した。実施時期はまだ決まっていないものの、官邸、民主党、財務省の動きから、近い将来、相続税が引き上げられることは避けられない趨勢だ。
いままで相続税は「5000万円に、1000万円×法定相続人数を加えた金額」が基礎控除額とされ、課税されなかった。今回の改正論議では、この基礎控除額が「3000万円に、600万円×法定相続人数を加えたもの」へ縮小されることになりそうだ。
ニッセイ基礎研究所経済調査部の桑畠滋・研究員の解説。
「たとえば、夫が亡くなり妻と2人の子が8000万円の遺産を相続する場合、現行では基礎控除額が8000万円なので相続税はかかりません。だが、改正後は基礎控除額が4800万円に一気に下がる。
もし改正が行なわれれば、相続税の対象になる人が全国民の4.2%から6~7%まで増えると試算されています。大まかにいうと、相続税の対象になる層が、これまでは大企業の役員クラスまでだったのが、部長クラスまで広がりそうだということです」
※週刊ポスト2012年1月1・6日号