国内

人間ドック再検査 「問診だけで検査は後日」の裏におバカ規制

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加と消費税増税。いま、日本を揺るがす2大問題だが、実はその前に論じるべき問題がある、双方の問題の対象となる「医療」分野を、日本の「おバカ規制」が歪めているのだ。政策工房社長の原英史氏が解説する。

* * *
無用に病院に通わされることは、いろいろある。例えば大病院で人間ドックを受診し、「要検査」と言われて再び病院に行くと、何時間も待たされた挙げ句、その日は医師の問診だけ。「検査は次回に」となったりする。

それでも、診療報酬表で定められた「初診料」がかかる。本人負担額はわずかに見えるが、健康保険からその2倍以上の診療報酬が支払われている。他のサービス業では到底考えられない“顧客対応”であり、工夫の余地はあるはずだ。

“従業員の扱い”の問題も指摘される。病院の勤務医の収入は、開業医と比べて平均5~6割程度。しかも夜勤などを含む激務。こうした待遇の悪さが医師不足を招き、医療の危機をさらに深刻化させる。

これらは、「病院経営」に問題があるから起きることだ。もし“経営のプロ”たちが病院経営に参入すれば、顧客満足度や従業員満足度を高めるため、様々な工夫ができるはずだ。

ところが、医療の世界には、株式会社は参入できない。しかも、医療法人の理事長は、原則として(都道府県知事の認可を受けない限り)医師か歯科医師でなければならない(医療法46条の3)。これは、「航空会社の経営者はパイロットでなければならない」と定めているようなものだ。もちろん優れた経営手腕を発揮する人もいるだろうが、「経営能力」と「業務上の免許の有無」は本来無関係だ。

また、医療費を減らす方法の一つは、検診機会の拡大だ。ところが、低価格で手軽に検診を受けられるようにと起業された「ワンコイン健診」サービスは、各地の保健所で規制の壁に阻まれている。

これでは、規制当局は、国民をわざと病気にかからせ、「医療」という利権のパイ拡大を図っていると思われても仕方ない。もちろんそれが医療費の増大につながるわけだ。こうした規制に手をつけない限り、どれだけ増税しても、医療はよくならない。

※SAPIO2011年12月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン