国の財源不足が話題に出るたびに持ち出されるのが、消費税、所得税の増税論議だ。では、これら日本の税は国際的に見た場合、高いのだろうか。中央大学法科大学院教授の森信茂樹氏が解説する。
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税負担の内訳を国際比較すると、所得税が最も低いのは日本で、次に低いフランス(10%)と比べ約3%も低くなっています。消費税は米国に次いで低いことがわかります。他方で法人税を見ると、ほぼ同じことがわかります。このように日本は個人への税は諸外国の中で低いことがわかります。
では、日本も諸外国並みに税を上げればよいかというと一概にそうはいえません。
税の負担を考える時に、重要なことは、課税ベース(底面積)と税率(高さ)の双方を考えることです。底面積×高さで税収・税負担が決まるのです。税収を増やそうと思った場合、課税ベースをそのままにして税率を上げる方法と、税率はそのままで課税ベースを広げるという2つの方法があります。
前者は勤労意欲の減少につながりますが、後者は、課税ベースを小さくしている各種控除や特例を見直すことになるので、公平感が上がります。そこで、「課税ベースが広く、税率が低い」税制が優れており、世界の税制改革もこの方向で行なわれてきました。
また、税負担の重さについては、日本の納税者の8割が所得税率5%と低く、英国では7.5割が約20%もの所得税を支払っています(図上)。さらに課税される最低所得もさまざまな控除により、夫婦子2人の給与所得者の場合261.7万円で、千数百万人が非納税者です。英国は課税最低所得が98.7万円(1ポンド=132円)、ドイツは236万円(1ユーロ=116円)です。税負担についても、日本が諸外国と比べ重いとはいえないことがわかります。
※『サラリーマンのための安心税金読本』(小学館)より