世界経済が減速する中、その牽引役として誰もが期待するのは中国経済だ。高い成長を続けて来た中国も足下では、インフレなどの不安材料を抱えており先行き不透明感が強い。2012年に指導者の交代を控えたいま、中国株のスペシャリスト、T.Sチャイナ・リサーチ代表の田代尚機氏がこれからの中国経済のポイントを解説する。
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中国の経済政策を見ていくうえで最も重要なのが、国家発展の基本方針である「第12次5か年計画」にほかならない。その1年目に当たる2011年はインフレ対策に追われ、思い切った政策が打ち出せなかった。だが、インフレが解消しつつある以上、この2012年こそが5か年計画の実質的な始まりといえるだろう。
景気サイクルで見れば、インフレが収まり、微調整しながら、徐々にアクセルを踏んでいくことで景気は上向く。その際に需要をどこに向けるか。いうまでもなく、社会主義国である中国は、中国共産党の政策によって動く計画経済下に置かれている。そこで政府が「ここが重点分野」という“お墨付き”を与えれば、そこにおカネが回る仕組みだ。
今後の重点分野は、12月中旬にも開かれる予定の中央経済工作会議で具体化する予定だが、すでに5か年計画では、「戦略的新興産業」として「バイオ」「省エネ環境」「新世代情報技術」「最先端機械設備」「新エネルギー」「新材料」「新エネルギー自動車」という7大産業の育成が掲げられている。これらの産業に資金が流れ込むことは必至の情勢である。
ただし、2012年には大きな不確定要因がある。中国はいよいよトップ交代の時期を迎えるが、はたして新政権が「発展重視派」なのか、「公正・公平重視派」なのか。それが大きな分かれ目となるのだ。
すでに次期国家主席に内定している習近平国家副主席は、発展重視派で知られた江沢民前国家主席の覚えがめでたい。だが、中国共産党は集団指導体制をとっており、トップ一人の意向では進まないのも事実だ。次期政権内にも現在の胡錦濤主席の流れを汲む公正・公平を重視するバランス派が食い込むのは必至であり、今後も政治的な葛藤は続くに違いない。
そして、それは今後の中国株への投資スタンスをも左右する。であるならば、現時点ではどちらに転んでも失敗しないような「両睨み」の投資戦略が賢明といえるだろう。
※マネーポスト2012年新春号