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ぎんさん娘「おっかさんは早い頃からお金を貯めてござった」

 ご長寿の双子として日本中を沸かせた“きんさんぎんさん”。その蟹江ぎんさんには、平均年齢93才と母親譲りのご長寿4人娘がいる。戦時下を生きた蟹江家の4姉妹が、当時を回想する。

 東日本大震災が起きて、日本中の人々が、家族やかけがえのない人たちとの絆に思いを馳せた2011年。巡りくる新年の干支は“辰”だ。

「おっかさん(ぎんさん)は明治25年(1892年)生まれで辰年じゃった。生きてござったら、120才ということになるにゃあ」

 いちばん上の姉、年子さん(98才)がいうと、他の3人が遠くを見るまなざしになった。

「おっかさんで思い出したけど、毎年お正月になると晴れ着を近所の呉服屋さんでこしらえてくれたがね。そいで大晦日の夕方に、それを着せてもろうてな。“今年も一年、有難うさんでした”と、近所の氏神さまにお参りしに行ってたがね」

 四女・百合子さん(91才)の面差しが少女のころに戻る。五女の美根代さん(89才)もしきりに相槌を打つ。

美根代さん:「そのお参りの前に、お風呂にはいって体を清めて、下着も足袋もな、上から下までみーんな新しいのに替えた」

 すると、三女・千多代さん(93才)が感慨深げにいった。

「娘が4人もいたで、晴れ着を用意するのは大変だったろうが、おっかさんは早いころからお金を貯めてござった。それを見て、子供ながらに“年末年始っちゅうんは特別なもんやなあ”と感じたがね。赤や黄色の模様の晴れ着の上に、綿入れの羽織を着せてもろうて、これがうれしかった」

 そして暮れになると、たいていの家で餅つきをした。

年子さん:「父親が杵を振るって、石臼でつかはった。ペッタンコ、ペッタンコって、ええ音が響いて、おっかさんが父親と息を合わせて手がえしをしてなぁ。その場面が、いまでも目に焼きついとる」

千多代さん:「そうそう。そいで鏡餅作るんだがね。これがおっかさん、上手でなあ。チョッチョッとやると、たちまちまーるい鏡餅ができた」

美根代さん:「ほんま、おっかさんは手品師みたいに手が器用じゃった。けんど、私ら4人とも、誰ひとり、そこが似とらんがね、ワッハハハハ」

 4姉妹は、いつものように平穏で笑いの絶えない正月を迎える。

※女性セブン2012年1月5・12日号

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