ライフ

2011年「原発事故の本質」 タブーを排除して書かれた書3冊

2011年発行本の中から厳選し、2012年を読む【テーマ別書評】。ドイツ文学者でエッセイストの池内紀氏は、「『原発事故』の本質」をテーマに、この3冊を選ぶ。

(1)『福島の原発事故をめぐって』(山本義隆/みすず書房)
(2)『脱原子力社会へ』(長谷川公一/岩波新書)
(3)『春を恨んだりはしない』(池澤夏樹/中央公論新社)

* * *
衝撃的な3.11のあと、原発関連の本があいついで出た。そのなかで(1)は、事故をめぐり、もっとも本質的なことが、すべてのタブーを排除した視点から、わかりやすく述べてある。巨大な利権をともなう原発開発が、どのような「深層底流」の中で進められたか、また「科学技術幻想とその破綻」について、この人だからこそ書けた。

(2)の著者は早くから、原子力を軸に据えた社会動向に警鐘を鳴らしていた。その恐れが的中した。「クリーンなエネルギー」のまやかしを批判した上で、「グリーン化」の提言が新鮮だ。再生可能エネルギーへ切り換えるためには、今がほとんど唯一のチャンスなのだ。

(3)は行動する文学者が現地体験から「震災をめぐって考えたこと」。情報化社会の中の原発の欺瞞を確認した上で、再生エネルギーへの転換を理想論として嗤う体制に、言葉でもって向かっている。「理想論は言葉を信頼し、現実論は権力や金に依る」

※週刊ポスト2012年1月1・6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト