国際情報

安倍晋三氏 金正恩は“父は誤り”と拉致問題進展可能性指摘

民主党政権発足以降、膠着状態にある日本人拉致問題。だが、金正恩新体制への移行でチャンスが訪れていると、安倍晋三元首相は言う。小泉政権時代、訪朝団として金正日総書記に対峙、5人の拉致被害者を連れ戻して以降も、拉致問題解決に取り組み続けてきた安倍氏に話を聞いた。

* * *
――金総書記の死去は日本人拉致問題にどう影響するか。

安倍:日本にとって大きなチャンスと捉えるべきだ。金総書記は拉致作戦の首謀者でありながら、2002年の小泉純一郎総理訪朝時に「5人生存、8人死亡以外の拉致被害者はいない」と断言した人物。最高指導者ゆえ彼の存命中にこの言葉を覆すのは難しく、拉致問題は暗礁に乗り上げていたが、後継者の金正恩ならばこの判断を「間違っていた」と変更することができる。

息子が“偉大なる”父親の政策を否定するのは高いハードルであり、父親の取り巻きとの激しい権力闘争を伴うだろうが、日本は知恵を絞って金正恩にこのハードルを乗り越えさせる努力をすべきだ。

――北朝鮮との交渉に関わった者として、このチャンスをどう活用すべきと考えるか。

安倍:これまでの経験と事実に基づいた拉致問題解決の方法はただ一つだ。彼らに「日本や国際社会の要求を受け入れなければ、国を存続させることは不可能だ」と判断させるしかない。

北朝鮮が善意に善意で応える国ではないことは歴史が証明している。過去、日本は数度にわたり食糧支援をしたが、結果として何一つ得ることができなかった。国際的にも1994年のKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)合意を反古にしてウランの濃縮計画を進め、2006年には100万tの重油提供を6か国協議で決定するも、ブッシュ政権がテロ支援国家の指定を解除した途端に核実験を強行した。彼らにとって約束は破るためにあるようなものだ。

私が経験した交渉でも金総書記は実に狡猾だった。2002年の小泉訪朝後、「5人の拉致被害者は北朝鮮にとどまることを望んでいる」と伝えられ、日本のマスコミは当初それを鵜呑みにして、まんまと騙された。しかし、後に北朝鮮側に強制的に言わされたことが明らかになっている。

したたかな北朝鮮に対し、日本単独でできることはすでにほとんどやっている。必要なのは国際的な圧力の輪を構築することであるが、その輪が完成する前に金総書記が死去してしまった。

※SAPIO2012年1月11・18日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン