話題のニュースや著名人などに縁のある料理を紹介する「日本全国縁食の旅」。2012年の日本人の食スタイルはどう変わるのか。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が注目のキーワードを紹介する。
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2012年の「食」に関するキーワードはズバリ「(海外を含めた)地域」「体験型イベント」「ノマド」(※1)。これらのキーワードで、パッと思い浮かぶのはB-1グランプリ。2006年以来、各地方の名物を集めた体験型イベントを、毎年場所を変えながら持ち回りで開催。昨年の姫路大会では、ついに来場者が50万人を超えた、国内随一の食イベントです。
ただし前回の2011年姫路大会では出展数63と、すべてのメニューを食べきることがもはや不可能なスケールになり、来場者からの「待ち時間が長すぎる」などの声も。2012年は北九州大会の開催が決定しているものの、将来は各地方ごとにわけての分散開催も検討されているのだとか。
B-1以外のイベントも同様で、タイやインド、ドイツなど各国の名物料理が屋台村形式で供される「××(国名)フェスティバル」は東京では30万人を動員するものもあり、タイフェスやインドフェスは既に関西などでも開催済み。
以前、一部のドイツ系インターナショナルスクールでしか開催されていなかった、ドイツのビール祭り「オクトーバーフェスト」も最近では横浜、日比谷のほか仙台、松本、静岡、福岡など既に各地方に進出しています。今年はロンドン五輪が行われるオリンピックイヤーということもあり、海外の「国や地域」からも目が離せません。
その他では昨年、ブレイクした「街コン」(※2)のように、地域の飲食店とコミュニケーションをフックにしたイベントも続々増殖中。派生型も含め、今年さらなるブレイクが予想されます。
この10年ほどで、各地にフード系ミュージアムやフードコートが激増し、地方・地域の食べ物を気軽に食べられるようになりましたが、震災以降、一般の人々が震災の復旧・復興支援活動に携わるなかで「現場へ行く」「体験する」ことの価値が再確認されました。
同時に九州新幹線の全線開通など、国内移動のインフラ整備が進んでいます。「地域」で行われる「イベント」を体験するために、食べ手の「ノマド化」はさらに加速していくに違いありません。
※ 1 遊牧民を指す言葉で、最近では外出先からノートパソコンなどで仕事をする人を指して「デジタルノマド」「ノマドワーカー」と呼ばれる
※ 2 一定の料金で地域の加盟飲食店を食べ歩きながら、街ぐるみで行う巨大な合コン