2011年12月31日をもってジャーナリスト活動を無期限休業する上杉隆氏が、権力と記者クラブなどによる「官報複合体」の内情を暴くべく、政治記者たちが政権幹部などを取材した40万枚にも及ぶオフレコメモなどを暴露する。政治とメディアの癒着の構造を上杉氏が改めて検証する。
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書くべきものを書かず政治家や政府のいいなりになってきた記者クラブの限界が、3.11の東日本大震災で露呈する。政府や東京電力の会見で、原発事故の問題を何も追及できない記者クラブの無能ぶりが、国民の目にも明らかになったのだ。
一方で2011年は、「オフレコ破り」によって、多くの政治家や官僚が辞任した。
だが、そもそも海外のジャーナリズムにおいては、複数の記者がいる懇談の場でオフレコが成立すること自体が稀だ。政治家や官僚の言いなりになって「オフレコ」を守る日本のメディアこそが異常なのである。
松本龍・復興担当相の宮城県知事に対する発言を最初に報じたのは東北放送だし、田中聡・沖縄防衛局長の「犯す」発言は琉球新報だった。ともに、記者クラブのなかではメインストリームではないローカルメディアが報じたものを、他が仕方なしに後追いしたに過ぎない。
鉢呂吉雄・経済産業相の「放射能つけちゃうぞ」発言に至っては、そもそも鉢呂氏は「放射能」という言葉を使っていない。防護服姿の鉢呂氏は、記者から「放射能付いているんじゃないですか?」といわれ、近づいただけだ。しかも第一報を報じたフジテレビ記者の姿を、鉢呂氏は確認していない。つまり、記者たちの談合で生まれた虚報で、鉢呂氏は辞任に追い込まれた。
松本氏といい鉢呂氏といい、政権の中枢ではなく、官僚たちが「あいつはもう駄目だ」と切り捨てた閣僚が、オフレコ破りの標的に遭っている。一方で仙谷氏ら政権中枢のオフレコが表に出ることは決してないのだから、「オフ破り」すら八百長にすぎないのだ。
政治家が表の会見ではウソをついていることを知りながら、国民を騙し続ける記者クラブメディア。これによって洗脳される国民は、あまりに不幸である。
いい加減、八百長カルテルに加担するのは止めるべきではないか。今回のメモ公開は、ジャーナリストとして無期限休業する私の、そうした「同業者」に対する40万ページにも及ぶ「クリスマスプレゼント」であり、記者クラブシステム全体への「最後通牒」でもあるのだ。
※週刊ポスト2012年1月1・6日号