経済アナリストの森永卓郎氏は、「2012年度の日本経済は、震災後の復興需要が経済を下支えし緩やかな回復基調が見られる」と予測している。しかし、その翌年の日本経済の見通しは決して良好なものとはいえない、という。以下、森永氏が解説する。
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懸念されるのは、復興需要が衰えた後です。阪神・淡路大震災後の1997年には、消費税を3%から5%に引き上げ、特別減税を打ち切るなど、9兆円のデフレ政策を行ない、そこから日本のデフレ経済が始まりました。関東大震災後は、1929年に就任した浜口雄幸首相が国家財政を改善する目的で、強烈な円高政策を取るとともに一気に財政を引き締め、結果的に超円高とデフレを招き、翌1930年から昭和恐慌に突入したのです。
円高・デフレに加えて、財政と金融の緊縮という今の政治経済状況は、昭和恐慌前夜に非常によく似ている。震災恐慌の足音が近づいているように思えてなりません。
最悪なのは、野田政権が所得税の増税とともに消費税を2015年までに10%まで段階的に引き上げると表明していることです。2013年度は、消費税アップの第一弾と所得税増税のダブルパンチが国民を襲うことになります。その一方で、復興需要は減少していくので、恐慌のリスクが非常に高まることは間違いありません。
もちろん、実際に恐慌が来るかは、今のところ定かではありません。ただ、いえるのは、2013年に衆参同時選挙が行なわれる可能性が高いので、そこで日本国民がどんな選択をするのかが、日本の命運を決めるターニングポイントになるということです。野田氏、あるいは同じ考えの政治家が政権を握れば、大恐慌突入が現実味を増すと考えられます。
※マネーポスト2012年新春号