2011年、EU(欧州連合)崩壊の危機、アメリカのデフォルト危機などで通貨問題は大きく揺れた。2012年、ドルの行方はどうなるのか。今、最も注目されているエコノミスト浜矩子氏が予測する。
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筆者はドル高修正の流れはいよいよ最終局面を迎えると予測する。財政恐慌の危機はギリシャという周辺から始まり、次第にEUの中心へと向かっているが、最終的には本丸アメリカへと向かう。
振り返れば、ドルと金の交換停止を宣言した1971年8月の「ニクソン・ショック」により、事実上ドルは基軸通貨の地位から退位を余儀なくされ、1985年9月のプラザ合意によってドル安が世界の合意となった。こうしたドルの落日にとどめを刺したのが2008年9月のリーマン・ショックだった。
加えて近年、アメリカ自身が、ドルが基軸通貨たることを放棄し、ドル安を露骨に望んでいる。それを物語るのが、オバマ大統領が10年初めの一般教書演説の中で「向こう5年間で輸出を倍増させる」と宣言したことだ。
さらに2011年の一般教書演説では「今後、世界で誕生する雇用機会は全てアメリカで生まれ、新たに起こるイノベーションは全てアメリカで起こるものでなければならない」と発言した。あからさまに〝アメリカ良ければ全て良し〟と宣言したのである。
筆者はこれまで、ドル高修正の象徴として、いずれ「1ドル=50円時代」が到来すると予告してきたが、2012年にはその数字がいよいよ現実のものとなっていくだろう。1ドル70円を割れば一気に加速がつき、60円を割って50円へと向かう。その時、名実ともに、完全に、ドルは基軸通貨でなくなる。
たとえて言えば、バスタブの栓を抜くと最初はゆっくりと水が減っていくが、最後に「しゅるん」と音を立てて消えていく。その「しゅるん」の瞬間ドルの完全な落日がやってくる。
EUもアメリカも破綻は避けられない。リーマン・ショックは金融恐慌を引き起こし、それを食い止めようとして財政が出動した。そのことで財政恐慌が起こり、それがまた金融恐慌をもたらすこうした金融恐慌と財政恐慌の無限ループが垣間見えたのが11年で、それが本格化するのが12年である。
ちなみに、日本が世界最大の債権国、アメリカが最大の債務国であるのに対し、ユーロ圏全体で見ると債務、債権はほぼバランスが取れている。とすれば、ユーロが今後も存続していると仮定して、円とドルの間にユーロが位置するのが適当であり、1ドル=50円時代における円の対ユーロレートは70円台ぐらいになっていくと思われる。
※SAPIO2012年1月11・18日号