巨額の損失隠しで揺れるオリンパスの内情を調査する第三者委員会が調査報告書を発表した2011年12月6日、衝撃的な情報が株式市場を駆け巡った。ある投資顧問会社がオリンパス株の5.95%を保有したとする大量保有報告書を同日付で関東財務局に提出したのだ。
この会社が、あの「タワー投資顧問」である。タワー投資顧問といえば、同社の運用責任者である清原達郎氏が2005年度(2004年分)の長者番付で、「所得税額約37億円、推定年収100億円」を叩き出して話題を集めたことで知られる。
なにしろ当時の長者番付といえば、ユニクロを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏や健康食品を販売する斎藤一人氏などが常連だった。にもかかわらず、単なる部長にすぎない清原氏が名だたる経営者を押しのけて堂々のトップに輝いたため、「ファンドマネージャーとはそんなに儲かる職業なのか」と一躍脚光を浴びることになったのだ。
しかし、タワー投資顧問の名声はこの時をピークに急落していく。「そもそもタワー投資顧問の運用手法はバリュー株投資といって割安株を仕込んで高値で売り抜くことを狙ったもの。新興市場バブルだった2006年初めまではそれが通用したが、ホリエモン逮捕によってバブルがはじけるのに伴い、目立った運用成績が残せなくなり、泣かず飛ばずの状態が続いていた」(市場関係者)。そんな矢先、誰もがその存在を忘れかけた頃に降って沸いたように飛び出したのが、このオリンパス株の大量購入だった。
大量保有報告書によれば、タワー投資顧問が購入した株数は、実に1612万9100株にも及ぶ。その保有目的は「投資一任契約による純投資」とされているが、当時の株価でざっと計算してみると、その額は160億円は下らない。なぜこの時期に上場廃止も取り沙汰される、あのオリンパス株をこれだけ購入したのか。その真偽を巡って、ネット上では「クソ株専門ファンドだから買ったのでは」といった憶測まで飛び交っているが、前出の市場関係者はこんな見方をする。
「一般的には、『上場廃止=倒産』、すなわち株券の価値はゼロになると見られているが、主力の内視鏡事業は世界シェア7割を握るなど堅調だし、会社の価値がゼロになるということはない。もちろん今後も株主代表訴訟やブランド価値の低下といったリスクはあるが、さすがにここにきて長年のウミを出し切った感があり、株価は2000円前後まで上昇する余地がある。そう考えると、1000円前後で仕込めたタワー投資顧問はうまい買い物をしたと見ていいだろう」
今後は「株価のみぞ知る」といったところか……。