1月12日に発売される『あんぽん 孫正義伝』(小学館刊)。著者の佐野眞一氏は、同書のなかで、孫正義氏へインタビューし、愛国心について尋ねている。(文中敬称略)
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「あなたは日本に帰化してよかったと言っているが、子どもの頃、自分を差別した日本が本当に好きなのか、本音で言えばすごく嫌いなんじゃないか」
意地悪だと思ったが、これも孫に会ったら、是非聞きたかった質問だった。
二〇一〇年十一月に行った最初のインタビューで、孫は大晦日になったらこたつでミカンをむきながら紅白歌合戦を見たい、餅を食いたい、それで初めてお正月を迎えたような気になると、言っている。
──孫さんは何でそんなに日本が好きなんですか。
「僕は生まれたのも日本だし、育ったのも日本ですからね。一番しっくりくるのは、やっぱり日本語であり、日本文化であり、日本の食生活なんですよ。僕はきなこ餅が好きなんです(笑)」
──それは、かわいらしくていいな(笑)。
「そういう小さなことに幸せを感じるんですよね。でも、自分が何人かと聞かれれば、いまでもよくわからないですね。孫家はもともと中国籍だし、韓国に亡命してから二十五代の間は韓国籍だし、じいちゃん、ばあちゃんの代から日本でしょう。
僕の血には、中国のDNAと韓国のDNAと日本で生まれ育った環境が、ミックスしているわけですよ。その上、十六でアメリカに行ってますから、その影響も強く受けている」
──まさに多国籍型マルチ人間ですね。でも、子どもの頃は、孫さんが一番しっくりくるというその日本民族から差別されたわけでしょ。
「差別はされました。でもそれはいつの時代でも、なにがしかはあったことですよ。日本の中にだって、ほんの百五十年前までは、士農工商っていう身分制度が社会構造の中に明確にあったじゃないですか。僕はやっぱり、生まれ育った国を愛し、その生まれ育った国に少しでも恩返ししたい、貢献したい。それが掛け値なしの純粋な気持ちです」
(『あんぽん 孫正義伝』より抜粋)