今年にも予想される総選挙。民主党の後退は間違いないところだが、新たな政党を巻き込んでの政界再編も取りざたされている。しかし、政権が替わったところで官僚の操り人形では国民生活の向上は望めない。野上忠興氏(政治ジャーナリスト)と本誌取材班が「霞が関と戦えない政治家」実態をレポートする。
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今年起きる出来事は、政界再編ではなく、政界「再生」でなければならない。
何も考えない丸投げ政治、国民の声が届かない似非民主主義から、有権者の求める改革を旧体制と戦ってでも成し遂げる政治体制に移行することができるのか。その試金石となるいくつかの課題が見えている。
まず、国民にとって2012年の最大の政治課題となるのは大増税だ。野田政権は「社会保障のため」という口実で消費税率10%への引き上げを打ち出したが、増税分のうち年金など社会保障の充実に使われるのはわずか5分の1(2.7兆円)だ。しかも、破綻状態の年金の抜本改革には手を付けようとせず、支給開始年齢引き上げなど国民の負担増に走っている。
では、増税で得たカネを何に使おうとしているのか。政府の来年度予算案でそれがはっきりした。野田政権は八ッ場(やんば)ダムの建設凍結解除をはじめ、東京外郭環状道路(外環道)の建設再開、北海道、北陸、九州の整備新幹線着工などいずれも「東北復興」とは関係ない巨大公共事業を次々に決めた。それだけで総事業費は4兆円を超える。
政府は「震災復興のカネがない」と約11兆円もの所得税、住民税の「復興増税」を決めたのだから、当然、ヒト、モノ、カネを東北の再生に集中投入するものだと思っていたら、全国各地で公共事業の大盤振る舞いを始めようとしているのだ。
国土交通大臣時代に八ッ場ダムの凍結を決めながら、再検証を役人に丸投げして「抵抗するフリ」だけしてみせた前原誠司・政調会長も「霞が関と戦えない政治家」の典型だろう。
野田政権は消費税大増税だけでは満足せず、「格差是正のために高所得者の負担をもっと重くすべき」と、所得税の最高税率引き上げ(40%→45%)の方針を打ち出した。
取れるところからは全部取るといういかにも官僚主導の発想である。霞が関に操られた増税派政治家が目指す「公平な社会」とは、国の活力をなくし、国民全体を貧しくする共産主義官僚制国家にほかならない。
※週刊ポスト2012年1月13・20日号