東日本大震災後に注目が集まる地震保険。加入者も急増中だというが、いったいどういう仕組なのだろうか。
保険料は、木造か非木造かの「建物の構造」、予測に基づく地震発生のリスクで区分けされた「住居の所在都道府県」により算出される。また、どの損保会社で加入しても保険料や補償内容はほとんど変わらない。大規模な震災が起きた時に、損保会社が保険金を支払えない事態が起こらないよう、「地震保険に関する法律」によって政府が保険内容を詳細に規定しているからだ。
気になるのは、補償の範囲と被害の算定方法だろう。地震被害を受けると、保険会社から派遣された査定人が被害状況の査定を行なうが、損害の認定基準は、『全損』『半損』『一部損』の3段階しかない。
その“境界線”は、政府が規定した「地震保険損害認定基準」で定められているが、「最終的には査定人の主観で判断される」(大手保険会社関係者)という。
また、地震保険の損害認定は、被災後に各自治体が出す「罹災証明」や「被災度区分判定」とは基準が異なる点にも注意が必要だ。「罹災証明では半壊と認定されたのに、地震保険では一部損だった」というケースも珍しくない。建物損壊の査定について、地震保険に精通する不動産コンサルティング「さくら事務所」の三上隆太郎氏が解説する。
「査定で大きな比重を占める基礎部分を中心に見るとわかりやすい。乱暴にいえば、一部損とは、基礎部分に少しひび割れが生じ、屋根瓦が多少落ちた程度の損害で、住み続けるには支障がないケース。半損は、基礎部分のひびの本数が多く、屋根瓦の大量落下、外壁にも損傷がみられるなど、大掛かりな修理をしないと居住できない状態。全損はそもそも修復が不可能で、建て直しが必要なケースです」
支払われる保険金は全損で契約金額の100%、半損で50%、一部損で5%と差が大きい。
「被害は半損程度だが、多大な修繕費用がかかるので、いっそ全損にしてしまった方が得だと、自ら自宅に火を付けた例もあると聞く。ただ、査定人の目も節穴ではないので、不自然な燃え方をしていたら簡単にバレます。その場合、保険金が1円も下りなくなるだけでなく、刑事罰の対象となる。しかし、全損と半損、半損と一部損の不公平感を取り除くのは保険会社の課題です」(前出の関係者)
※週刊ポスト2012年1月13・20日号