世界的な不況を尻目に「100円ショップ」が躍進している。デフレが長引く日本ではすでに当たり前の光景となっているが、いまや「100均」は日本だけでなく、世界的なブームになっているという。世界経済の動向に詳しく、最新刊『日本人が知らなかった海外投資 米国株』を上梓する戸松信博氏(グローバルリンクアドバイザーズ代表)が解説する。
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米国では「ダラーストア」、イギリスでは「99ペンスショップ」、韓国では「1000ウォンショップ」などと呼ばれる、日本の「100円ショップ」に相当するディスカウントストアが世界的な不況を背景に売り上げを伸ばし、株価も好調が続いています。
日本では最大手のダイソーは上場していませんが、セリア(ジャスダック・2782)やキャンドゥ(東証1部・2698)が上場しており、なかでもセリアの株価は2009年1月の5万8000円から2011年11月末には44万3000円へと約2年で7.6倍にまで膨らみ、2011年の1年だけでも2.8倍もの上昇を見せています。
米国でも大手3社が金融危機後に業績を伸ばし、2011年は最大手のダラー・ジェネラル(DG)が600店以上、2位のファミリー・ダラー(FDO)や3位のダラー・ツリー(DLTR)がいずれも300店という過去5年以上見られなかったハイペースで店舗数を増加。株価も市場平均を大幅に上回るパフォーマンスとなっています。
その背景には、やはり長引く雇用環境の悪化が挙げられます。米国の失業率はオバマ大統領就任後に何ら改善されず、依然として8.6%という高水準。しかもこれは現在、求職中の人のみをカウントした数字であり、すでに職探しを諦めた人の数は含まれておらず、それも含めると失業率は16%を超えるとも見られる最悪な状態にあります。特にもともと低所得者だった人ほど失業率が高くなっており、そうした人々のディスカウント店に対するニーズは日に日に強まっているわけです。
実は、この動きには米国で最も成功した投資家であるウォーレン・バフェット氏も注目しているようで、同氏が率いる投資会社・バークシャーハサウェイは2011年第2四半期に最大手のDGの株式を取得し、第3四半期にも買い増しするほど。世界的な不況はまだまだ長引く雲行きですから、著名な投資家が熱い視線を送るこのトレンドは注目に値するのではないでしょうか。