中国の次期最高指導者と目される習近平・国家副主席(58)の夫人、彭麗媛さん(49)ら20人が2011年12月下旬、中華芸術文化賞を受賞した。今回が初の試みで、「中国の文化・芸術界では最高の賞」との触れ込みだ。
「日本でいえば人間国宝に相当する」(主催団体関係者)そうだが、彭麗媛さんはたんなる流行歌手で、専門は伝統文化とはほど遠いだけに、「次期最高指導者の習近平の妻だから、習氏の箔付けに、賞が授与された。あまりにも身びいき」などとの批判がネット上で巻き起こっている。
この賞は世界に誇れる中国の伝統文化に習熟し、中国文化の精妙さを広く世界に伝えた芸術家や文化人に与えられるもので、各分野から20人、さらに今後の活躍が期待される若手芸術家3人に特別賞として奨励賞が贈られた。
授賞式には、中国共産党政治局員の劉延東・副首相や蔡武・文化相ら中国の文化芸術分野を取り仕切る最高幹部が出席。劉副首相は「中華文化を広く世界に宣揚した」「中国の特色のある社会主義の文化を発展させた」などとして、20人の受賞者には賞金として100万元(約1260万円)、若手の奨励賞受賞者には60万元(約756万円)を贈呈した。
このなかには、「紅楼夢」や「水滸伝」の研究など中国の伝統文化研究の第一人者である馮其庸氏や水墨画の大家で台湾在住の劉国松氏など、さすがに日本の人間国宝にも負けず劣らないほどの大家ぞろい。しかし、そのなかに一人、異質な彭麗媛氏の名前が入っていることに大きな違和感が広がったわけだ。
彭麗媛氏は14歳で、郷里・山東省の山東芸術学校に入学し、その歌唱力が認められて、18歳で地元の中国人民解放軍部隊の軍楽団員(名目は兵士)として入隊し、22歳のときに、難関中の難関と言われた人民解放軍総政治部歌舞団に入団を果たした。歌舞団は主に地方の第一線の部隊の慰問のため、歌や劇を披露するものだが、歌舞団員は芸に専念できる環境が整えられることや、中国全土のほか、海外公演などもあり、極めて恵まれた将来を約束されることで、非常に人気がある。
彭麗媛氏の場合、日本の「紅白歌合戦」に相当する、中国中央テレビ局の「春節聯歓晩会」の常連となり、おおとりを20年以上も務めるなど、歌手として大変な成功を収めた。
さらに、1986年、当時の厦門(アモイ)市副市長だった習近平氏に見初められて結婚。その後、2002年11月に習近平が浙江省党委書記に就任したのを機に歌手を引退し、家庭に入った。現在は名誉職的な中国音楽家協会副主席や総政治部歌舞団団長の肩書きがあるものの、実質的な活動はほとんど行なっていない。
そのため、ネット上では「見えすいた選考結果だ。あまりにも依怙贔屓。中国の恥だ」などと批判が集中している。
これに対して、主催団体の「中国芸術研究院」は「人民に奉仕し、祖国の発展に報いた方々を選出しており、彭麗媛氏もその栄誉にふさわしい文化貢献をしてきた。受賞して当然だ」とコメントしている。