これまで機関投資家や富裕層に提供されていた「絶対収益の追求を目的としたヘッジファンド」が、一般投資家向けに公募型投資信託として登場した。株式市場の動向に左右されずに収益を得る機会を持てるという「日本株マーケット・ニュートラル戦略」を採用した私募投資信託を組み込む『エピック・ヘッジファンド・セレクション1』とは? 同商品の販売を開始したヘッジファンド証券の代表取締役、眞野定也氏に聞いた。
最近の世界的な金融危機や債務危機、世界同時株安などにより、投資家の間では、単一の金融商品を保有するリスクはもちろん、分散投資に関しても、今後の資産運用に対して大きな不安が広がっている。
このようにマーケット事情が厳しい状況のなか、ヘッジファンド証券が、市場(マーケット)に対して中立(ニュートラル)となるように設計された運用システムによってマーケット・リスクを排除する金融商品を11月、販売開始した。
複数のヘッジファンドに投資する公募型投資信託『エピック・ヘッジファンド・セレクション1』と名づけられたこの商品は、運用会社のエピック・パートナーズ・インベストメンツが自ら運用する、「日本株マーケット・ニュートラル戦略」を採用した3本の組み入れファンド(私募投資信託)に投資する。
投資対象がすべて日本株というのがこの商品の特徴の1つだが、まず「日本株マーケット・ニュートラル戦略」とは何かを簡単に説明しよう。
株式市場では、長期的には割安銘柄は買われ、割高銘柄は売られるという市場参加者の投資行動がみられる。「日本株マーケット・ニュートラル戦略」は、この傾向に基づき、株式銘柄の中から一時的に割安と評価されている銘柄を買い付け(ロング)、同時に割高と評価されている銘柄をほぼ同金額、空売り(ショート)することで、株式市場が上昇、下落のどちらに動いても収益を得る機会を持てるように考えられているという。
「ポイントは、単なるロング・ショート戦略ではない点です。少数の銘柄だけでマーケット・ニュートラル運用をした場合、個別銘柄リスクがあり、思惑どおり割高・割安が解消されず損失を出す場合があります。しかし、組み入れファンドに採用している『日本株マーケット・ニュートラル戦略』は3ついずれのファンドでもロング、ショートともに150銘柄~550銘柄程度まで分散することにより、個別銘柄リスクやタイミング・リスクの低減を図っています」(眞野氏。以下同)
リスクをコントロールしながら、安定的かつ最大限のリターンを目指すよう設計されているわけだ。
「今まで、このようなヘッジファンド商品は、投資金額上の問題などから、一部の富裕層に提供するにとどまり、より多くの真剣に資産運用を検討している投資家の方々まで案内することができず、もどかしい思いを抱いていました」
この『エピック・ヘッジファンド・セレクション1』は、1本当たり2000万円以上の投資金額が必要な私募投資信託を、公募型投資信託の形にすることによって、募集目標額に達するまでオープンエンドの形で最低100万円から投資することが可能になっている。
ちなみに、私募投資信託は証券取引法で定義されており、【1】50人以上の多数の投資家を相手に行なうのではないもの【2】大蔵省令で定める適格機関投資家に対して行なうもの――の2種類がある。これに対し、公募型投資信託とは、50人以上の多数の投資家に対して行なう取得勧誘となり、一般的に言われる投資信託とはこの公募型投資信託が多いとされる。
ヘッジファンド証券は、「絶対収益の追求を目的とした金融商品の提供」をスローガンとして設立された、日本でも数少ない独立系インターネット取引を主とした証券会社だ。取り扱い商品第1弾『エピック・ヘッジファンド・セレクション1』の販売開始に合わせて、11月15日に営業をスタートした。
「社名にある『ヘッジ』とは、リスクをヘッジ(回避、低減)するという意味合いを持ち、投資家の大事な資産を『ヘッジ』することに特化した事業を展開していきます。インターネットを通じ、一般の投資家の方々に新たな運用手段の1つとして、絶対収益の追求を目的とするヘッジファンドという金融商品を広めていきたいと考えています」
※マネーポスト2012年新春号