2011年8月、1900ドル(1トロイオンス=約31.1035グラム当たり)の大台を突破した金価格(ニューヨーク先物)は、一時1500ドル台まで急落、その後は1800ドル前後まで回復している。2012年には2000ドル台もありうるとの予測もある中、日本人はどのような投資戦略を考えるべきなのか、金のスペシャリストの豊島逸夫氏が解説する。
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かつてない史上最高値の更新が予想されるなか、われわれ日本人は金投資をするうえで極めて有利な立場にある。いうまでもなく、「円高」だ。
ドル建て金価格は過去最安値の250ドルから直近の1700ドル台まで7倍近く上昇しているのに対し、円建て金価格は1グラム=900円台から4400円へと4.9倍前後にすぎない。額面通りに受け取れば、それだけ上げ幅が少ないように思えるが、その差が円高による相殺分である。なお、長期保有を前提にすれば、円高の時期は日本人が他国に比し割安に買うことができるのだ。
ましてや震災復興もあり、日本の財政赤字は大きく膨れ上がっている。それを解消するためには、増税するか、お札を刷りまくるしかない。増税が進めば、富裕層ほど資産の海外逃避を加速させるだろうし、ドルもユーロも不安定な状況では、その行く先は無国籍通貨である金が浮上する。
一方、日本円が大量発行されれば、その価値は希薄化し、長期的には円安に触れることが予想される。早ければ、その兆候は2012年にも見えてくるだろうが、円安になれば、円建て金価格は割高になるから、長期投資家にとっては「売り」のタイミングとなるだろう。
※マネーポスト2012年新春号