全都道府県で暴力団排除条例の施行がそろい踏みしたが、暴力団はそれにどう対応していくのか。ベストセラー『暴力団』(新潮新書)の著者であるノンフィクション作家の溝口敦氏が解説する。
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個別の暴力団状況を見ると、山口組、住吉会、稲川会の3広域団体とも拍子抜けするほど危機意識が薄い。山口組や住吉会は2011年10月ごろ弁護士がまとめた暴排条例マニュアルをすでに作成、一部に配布したが、内容は常識的で、秘策の類は記されていない。
山口組では破門状などの回状は今後郵送によらずファックス送信で行なう、歳暮、中元の類はいっさい自粛するなどを決めている。また暴排条例施行後、山口組直系の國粹会から新たに若頭だった佐藤光男九代目落合一家総長を直系組長に抜擢し、東京を地盤に落合金町連合を結成させた。
これにより東京には國粹会と落合金町連合、二つの山口組直系組織が誕生したわけだが、これに対する関東系暴力団の反発は11年12月、六本木ビール瓶殴打事件が起きた程度である。今後、おそらく対立・抗争という経過はたどらず、共存していく模様である。山口組系の企業事務所は以前から都内に存在したが、今後、都民は二つの山口組直系組傘下の組事務所に直面することになる。
※SAPIO2012年1月18日号