東日本大震災、ユーロ危機と多くの脅威にさらされた日本企業は、なかなか浮上のきっかけを捕めずにいる。しかし、このまま日本経済が「失われた30年」に突入してよいはずがない。大前研一氏が、日本企業が真のグローバル化を達成し、世界で活躍するための条件について、ここでは世界最適化を徹底するための方法に指摘する。
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最も安く買える所で買い、最も安く作れる所で作り、最も高く売れるマーケットで売る。それが「世界最適化」である。グローバル化の目的はそれしかない。
ところが、多くの日本企業はそうなっていない。たとえば、原材料を同じ企業から30年にもわたって買っている、という具合である。しかし、世界ベースで調達を行なえば、おそらく原価は半分になるし、今はネットで集中購買を行なう世界的なサイトもいくつか登場している。
あるいは、生産拠点をミャンマーに移す。今や中国の人件費は内陸部でも実質月3万~4万円になっている。タイは2万~3万円、ベトナムは10年前から徐々に上がり、現在は1万円を超えている。
一方、ミャンマーの人件費はブルーカラーが月20~25ドル、つまり1600~2000円ほどである。日本が月20万円とすれば「100分の1」だ。企業が殺到すれば人件費は上がるが、産業基盤が整うまでには10年以上かかるだろうから、ベトナム並みの賃金になるのはかなり先だと思われる。世界の最適化のためには、常に敏感かつ冷静に世界情勢を見極める目が必要だ。
※SAPIO2012年1月11・18日号